うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

言葉が落ちてくる、ここはとても速い川

3月に入って、ちょっとずつ

あったこぅなってきてますかね。

今朝、朝刊を取りに行ったら、

車の屋根に雪が積もってましたけど。

 

うめなか、今月は3回もライブがあったんです。

社共、青春、府庁。

(知らん人は「なんのこっちゃ」です)

知らんかったなあ。

 

3月に入って読み終えた本がこれ。

ここはとても速い川

中原中也賞を受賞した注目詩人による、

初めての小説集。

満場一致の、第43回野間文芸新人賞受賞作。

詩人が書いた小説だから、

普通に小説を読むようには

内容が頭に入ってきませんでした。

まるでテトリスのように不規則に言葉が落ちてくる

とネットで表現してる人がいて、

うん、まさにそれ! と思いました。

 

予備知識なしで本を手に取って、

ページを開いて最初の1行、

抜けていった乳歯は昔バザーで買った、

カバン型の指輪ケースに入れていってんねん。

という書き出しで、

えええ? なんの話やろ?

カバン型の指輪ケースて?

と思ってしまいます。

 

関西の児童養護施設に住む、

小学5年生の男の子のひとり語りです。

読んでいるあいだは自分の知らない世界に、

リアルに感じられるその世界に、

ずっと浸っていられる、そういう小説でした。

子どもたちから見える大人の世界、

人やものの捉え方が新鮮に感じられました。

雑に扱われる人間の痛みや哀しみが

こちらにも伝染(うつ)ってきそう。

 

子どもの頃の自分って、こんなにいろんな感覚を

匂いや、手触りや、光や影、なんやかや、

意識しながら生きてたかしらと思いました。

 

日当たりの悪い場所に咲いているアガパンサスを、

知らないおばあさんの家の前の、

手入れの行き届いたプランター

植え替えようと画策する主人公の発想は、

かわいくて、罪がなくて、やさしいと感じました。

 

収録されているもう1作、

「膨張」という短編は、

定住する家を持たずに移動しながら

生活する人たち――

アドレスホッパーの生態を描いていて興味深かったです。

若い人は自分のナマの感情をあまり吐き出さないもの

と思って油断していたら、

ページの中から心の叫びがうわっと飛び出してきてびっくり。

ああ、人間は変わらないと安心できたりもしました。