うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

死傷者には沈黙の艦隊

沈黙の艦隊シーズン1~東京湾大海戦~

一気見しました。

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潜水艦ものにハズレなし

ってことで、アマゾンプライムで公開された

この作品も例外ではありませんでした。

 

見どころは戦争アクションと政治スリラーの両面あります。

映像的には見ごたえがあって筋運びも快調であるものの、

そんなことある?

というツッコミどころ満載でした。

 

そもそもがありえない話の連続です。

いえ、ありえない話でも説得力があればいいんです。

でもこのありえなさを国民(視聴者)に納得させるのは

極めて困難で、はなから無理筋と感じてしまうのです。

納得感がないから主人公は根拠なき自信で動いているように見えます。

 

ストーリーはこんなふうに展開します。

①日米が秘密裏に最新最強の原子力潜水艦を共同開発する

②その原潜がアメリカ海軍の指揮下を離れて独立宣言する

アメリカはこれを反乱と認め撃沈を決定

④日本は反乱原潜「独立国やまと」と同盟を結ぶ

⑤やまとを守るために海上自衛隊が防衛出動して

自衛隊は同盟国アメリカと交戦する

 

日本国民の皆さん、どこまでだったら了承しますか?

原潜保有に賛同できるかどうかは別にして、

そういうことがありえるかどうか。

 

①の段階からありえないと思います。

まず新型原潜の引き渡しに先立って、

海自の潜水艦を事故を装って沈没させ、

海江田艦長以下全員絶望という偽装工作をして、

新型艦に乗り込むのです。

80人近い乗員には家族も恋人もいるでしょうし、

そんなことできます? 

 

④に至っては日本がアメリカと敵対してまで、

「テロリスト国家」を選ぶメリットがわかりません。

核搭載の原潜を孤立させてはならない

と総理の竹上は言うんですが、それ以上の説明はありません。

かといって核武装に下心がありそうでもなくて、

真意がわからないのです。

戦争は二度とだめだと言いながら

戦争(状態)に向かっていきます。

やまと艦長を捕えるために防衛出動する

というのが普通じゃないでしょうか。

 

やまとが核兵器を搭載しているかどうか

真実はあかされませんが、

核兵器があるかもと思わせるだけで抑止力になる、

はずです。

しかし、米軍は核による反撃のあるなしに

確信を持てないまま攻撃してきます。

作品世界で核の抑止力は働いていません。

とするとやまとと同盟する日本国のメリットは

ないのではないでしょうか。

 

マンガは全巻購入して30年くらい前に読んでまして、

ハラハラワクワクした、あの興奮はこの実写版にもあります。

この機会にアニメ版を見たのですが、

こちらのほうが原作に近く、

より丁寧に登場人物の心情を描いていると感じました。

「お前にだって妻子もいるし、母親が故郷にいるだろう」

と同期の深町は海江田艦長を罵倒するし、

竹上総理は野党をはじめ各方面から非難されます。

閣僚だって反対意見を言います。

アンチの声(視聴者の疑問)をきちんと出すことで、

視聴者が抱くストーリーへの拒絶反応を和らげているのです。

ところが、実写版にはこういうアンチの声が出てきません。

反論を恐れずこういう決断をする人物はいていいけれど、

どういう成算があってこういう決断・行動を

とっているかが見えないのです。

 

第七艦隊の司令官は逆に慎重すぎます。

浮上したやまとと空母の一騎打ちになるとき、

彼はこのチキンレースから降ります。

そのままぶつけていればやまとは

確実に損傷を受けるか沈没したはず。

あるいは駆逐艦に発砲させるときも威嚇射撃を命じます。

最初から当ててしまえば面倒はないのに。

 

あと戦闘アクションでは、

海戦も含めて運まかせな展開が多いことが気になります。

魚雷を船体ではじき返すなんてほんとにできるのか。

たまたまうまくいっただけのように見えます。

海江田が東京のプレスセンターにヘリで降り立つところ、

アメリカは絶好のチャンスとみて狙撃するでしょう。

ヘリコプターごと撃墜する選択肢も除外しないはず。

その危険があるのに海江田と竹上総理との対面は

オープンすぎました。

 

いちばん違和感があったのが死傷者を描かないことです。

アメリカの航空母艦や日本の自衛艦が被弾・沈没すれば、

数百~数千人の死傷者が出るでしょうに、

映像として描かないどころか、セリフにも言及がありません。

日米の政治家も軍人たちも犠牲者について沈黙しています。

一方で、やまとを追う深町は、

かつて海江田艦長の副長として搭乗していた潜水艦の事故で、

ひとりの部下を見殺しにしたことをトラウマとして抱え、

海江田の非情さを呪い続けています。

それはそれでいいのですが、

艦全体を救うためにひとりを犠牲にすることと、

武力行使多大な犠牲を出すことの間には

大きな隔たりがあります。

部下ひとりの死を悔いる人間と、

海戦によって生じる多数の死傷者に無自覚な人間が

同居しているバランスの悪さを感じました。

 

以上、いろいろ不満点を書きましたが、

一気見したのは事実です。

いや~、早くシーズン2が見たいです。