うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

汚れた服は冷凍する

宇多田ヒカルの最新ベストアルバムは

SCIENCE FICTION

っていうんですね。

宇多田ヒカル曰く、

かっこいいでしょって。

 

今回読み終えた本もサイエンス・フィクションです。

SFは大好きで、映画も本も、

ときどき見たり読んだりしてます。

自分の印象でいうと、

舞台設定や小道具がSF的なのは増えてますけど、

純粋にサイエンスが感じられるSFは少ないかも。

こんな本格SFは「三体」以来です。

 

プロジェクト・ヘイル・メアリー

サイエンスがたっぷり感じられるSFです。

ジャンルでいえば、破滅SFであり、

ファースト・コンタクトSF

地球滅亡の危機が迫るなか、

主人公の科学者が異星人と遭遇する

というストーリーです。

SFの肝である「センス・オブ・ワンダー」に満ちた、

ワクワク感いっぱいの小説でした。

(まだ上巻しか読んでないけど――人気なので順番がまわってこない)

 

ヘイル・メアリー

とは宇宙船の名前で、アヴェ・マリア」の意。

また、アメフトで試合終盤、劣勢のチームが

運を天にまかせて投げるロングパスを意味する俗語でもあります。

人類の命運がかかった宇宙船の名前にしては、

おふざけが過ぎるといいますか、

随所にジョークが散りばめられたユーモア小説でもあります。

 

主人公がこんな独白をします。

トンネルの長さは約二〇フィート。もしくは約七メートル。

ああ、アメリカ人科学者はときに自分にうんざりすることがある。

置かれた状況によって、どういう単位で考えるかがまちまちなのだ。

 

前から疑問に思ってたんですね。

欧米の、メートル法以外の国の科学者はどういう単位で、

事物を計測し、認識しているか。

なるほど、こういうことでした。

不自由なもんですね。

 

主人公は科学者らしく「測っては計算する」の

くり返しが習い性というか、大好きなんです。

科学的思考とはこういうものかと感心したのは、

洗濯機のない船内で生じる衣類の匂い問題の解決法。

 

これだけハイテクな船なのに、

まだ服を洗濯する方法が見つかっていない。

だから服を水浸しにして、そのまましばらくのあいだ

ラボのフリーザーに入れることにしている。

それで菌は死滅する。匂いの元は菌だ。

清潔な、きれいではない服。

匂いの元は菌で、それがなくなれば、

汚れは気にしない、

科学原理主義なところが科学者です。

 

日本人読者にちょっとうれしいのが、

小説の始まりに近いところに出てくる会話。

太陽の異常に科学者が気づいたきっかけについて話しています。

「アマテラスって聞いたことある?  日本の太陽観測衛星」

「ああ。JAXAがずっと前からすごいデータを手に入れてる。

 ほんと、じつにすばらしいよ。

 水星と金星のまんなかあたりの太陽周回軌道にのっているんだ。

 二〇種類の観測機器を搭載していて――」

 

調べてみると、アマテル(アマテラスの別称)という衛星が

イプシロンロケット6号機で打ち上げられたようなんですけど、

2022年10月12日イプシロンロケット6号機打上げ失敗

という記事が出てきました。

これのことなのかなあ。