うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

盤上のハンターキラー

見てしまいましたがな。

アマゾンプライムで2回も。

そんなあほな~~~~

ありえへ~~~~~ん

とあきれつつ一気に最後まで。

なんせ大好きな潜水艦モノですしね。

このジャンルでは近年で最高クラスの潜印良品じゃないでしょうか。

ハンターキラー 潜航せよ

 

ハンターキラーというのは攻撃型潜水艦のことですね。

敵潜水艦を狩って仕留めるって意味でしょうか。

「潜航せよ」というサブの邦題はかつてのヒット作、

「深く静かに潜航せよ」から取ってきたのかなあ。

だとしたら、古い! だれも知らん!

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潜水艦モノは潜水艦という密室の中を描くことが多いのですが、

攻撃型原子力潜水艦ハンターキラー×ネイビーシールズが強力タッグ

というキャッチフレーズからわかるように、

海中戦と地上戦が同時進行する流れで、話の展開に変化を与えています。

チョコとバニラのミックスソフトみたいなもんですねえ。

どちらもおいしくいただけて、満足度は非常に高いです。

gaga.ne.jp

 

あらすじはよくあるクーデターもの。

ロシアの国防大臣が(対外的に弱腰の)大統領を拘束して

アメリカとの全面戦争を企てます。

その動機にリアリティはないのですが、

そこは「ワイルド・スピード」シリーズ製作陣が

関わっているということで納得。

アクション中心の映画なのねと思って、リアリズムのことは忘れます。

 

それでも面白いです。

監督はドノヴァン・マーシュという人で、

長編がこれで2作目というのは意外です。

 

冒頭、休暇中のグラス艦長が北欧のフィヨルドで弓矢を使う狩りをしています。

大きなヘラジカを見つけて、いままさに矢を放たんと弦を引き絞ったとき、

傍らにメスと子がいることに気づき、断念します。

より大きな価値のためにハンターキラーの本能を抑制できる人間だという

グラス艦長のプロフィールをここで端的に表します。

風の谷のナウシカ」でも、おびえた小動物に指を噛ませたまま

じっと堪えるナウシカを見せて、彼女が慈愛の人であることを示しますね。

あれと同じです。

 

この映画で感心したのはまず艦内の描写です。

あと数十年は現役で使われるというヴァージニア級攻撃型潜水艦に

スタッフが試乗して、取材成果をセットや美術に活かしています。

洋上を航行する雄姿は実際の映像でしょう。

本物感がしっかり出ています。

 

以下、公式HPからの引用です。

海軍は、パール・ハーバーに着岸している原子力潜水艦を開放し、

2日間だけ撮影させてくれた。

機密漏えいを防ぐためもあり、撮影にはずっと海軍の人間が付き添った。

「1日目は潜水艦の内部、2日目は潜水する様子を撮影した。

8000トンもの巨大な機械が海を潜っていく映像は、

CGでは絶対に作り出せないと思ったね」とマーシュ監督は振り返る。

 

なにより舌を巻いたのは急速潜航する場面。

潜水艦は進行方向に向かって前傾するので

乗員は後ろにそっくり返る姿勢になります。

それがあまりに自然なので、すごい演技! と思ったら、

発令所のセットが回転台の上に載ってるんですって。

マーシュ監督は、潜水艦のセットを

巨大なジンバル(回転台)の上に設置して撮影することを思いつく。

「潜水艦に乗って海面から50度降下すると、すべてが傾き始める。

とてもスリリングな体験だった。

あの感覚を、俳優たちにも味わってほしかった。

従来ならカメラを傾けて撮影して動きを出すが、それでは不十分だ。

ジンバルの上のセットで演じるのは簡単なことではなかったが、

自然に緊張感が生まれ、海の底にいるような気分になった」

 

もうひとつは水中戦のシーン。

敵の探知網をくぐり抜け、魚雷からいかに逃れるか。

潜水艦モノらしく息づまるシーンが連続して、

死力を尽くす艦長の智謀、胆力が描かれます。

ここは大きな見所ですね。

 

しかし、最後は人間対人間という要素。

サブマリナー(潜水艦乗り)であることの矜持を胸に

グラス艦長はロシア艦長との信頼を育みます。

 

このロシア艦長がスウェーデンの名優、ミカエル・ニクヴィスト

残念ながらこの映画の公開前に亡くなってるそうです。

享年56歳だそうで。

 

以上、大絶賛した「ハンターキラー」ですが、いくつか疑問が残ります。

クーデターを起こした国防相の動機です。

アメリカとの正面戦争を果たした後、

彼はどんな戦後を夢見ていたのでしょう。

米ロが戦えば中国が漁夫の利を占めるのみです。

そもそも最初の戦いが艦隊決戦のようで、

これだとロシア海軍は不利じゃないでしょうか。

いきなり核の先制攻撃をするならわかるのですけれど。

 

もうひとつは細かいけれど、米ロの魚雷の誘導方法です。

たとえばアメリカ側のMk48の誘導システムは、

魚雷本体のソナーのみによる探信/受聴誘導と、

母艦からの有線誘導の2つである。

ウィキペディアにあります。

映画では、自ら索敵して進路を決める

自律型のホーミング魚雷を使っているようでもあり、

母艦から制御する有線魚雷のようでもあるのです。

魚雷に母艦から新しいデータを与える場面があるのに、

有線であるとわかる撮り方にはなっていません。

 

あとチャレンジコインという軍隊独特の習慣も描かれます。

艦(部隊)ごとに与えられるコインを友情の証として交換して

互いの絆を深めるということがあるのでしょうか。

映画の中ではけっこう大きな意味をもつものとして登場していますが、

そのへんの説明はありませんでした。

 

そういう説明不足に感じる部分があるので、

そこはまた原作を読んで納得したいと思いました。

すぐに図書館に予約を入れましたよ。

 

地上戦については書く余裕がなかったけど、

こちらはさらにぶっ飛びでありえない展開でした。

でも面白かったんです。

 

いや~、映画って面白いもんですねえ。