うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

ムーディー佐藤、マーティ・ロビンスをうたう

うめなかの音楽仲間、スリム佐藤さんがCDデビューされました。

パチパチパチ! 

 ベースマンのチャーリー谷口さんにそそのかされ(!)て、

自費出版を決心されたとか。

そしてただいま絶賛発売中!

Now on sale!(1500円)

ってやつなんです。

タイトルは、

Slim Sato Sings Marty Robbins

スリム佐藤、マーティ・ロビンスをうたう

佐藤さんのかねてからの、

敬愛するマーティ・ロビンス のヒット曲をうたいたい

という夢が実現したわけです。

 

実を言うと、マーティ・ロビンスって全然知りませんでした。

ポップ・カントリーのスターなんですって。

1925年9月26日にアリゾナ州グレンデールで生まれ育ちました。

西部劇風の音楽のヒット作「El Paso」などで知られています。

柔軟な歌唱力を持っていて、さまざまな曲を歌い分けています。

また、彼は俳優、TV司会者、小説家(『The Small Town』を書いた)、

ストックカー(改造車)のレーシング・ドライバーとしても活躍しました。

1982年12月8日にテネシー州ナッシュヴィルにて死去しました。

とネットでは紹介されていました。

 

早速、聴かせていただきました。

針を落とした瞬間

と書きたいところですが、CDなので、

イヤホンから音楽が流れだした瞬間、

ああ、いいギターだと思いました。

荻野信彦さんという方の演奏です。

この方は、関西のカントリー界では

知る人ぞ知るギターの名手なのだそうです。

 

アルバムは荻野信彦さんの主宰するNob Sound

というスタジオ(レーベル?)で収録されました。

チャーリー谷口さんが音楽ソフトで制作した、

いわゆるカラオケを聴きながら佐藤さんが歌入れをして、

そこに荻野さんが後からリードギターをつけたとのこと。

コーラスは佐藤さんがつけておられるのか?

 

とにかくバックの演奏がとてもしっかりして、

耳に心地よいのが第一印象でした。

若い頃と比べると、自分の歌声をコントロールできないことが多く、

老いを感じることしきりです

と佐藤さんは謙遜されてますが、これって、

若い頃はあたしもナイスバデーだったのよん

というおばさんの自己主張のようにも聞こえます。

いえいえ、佐藤さん、老化なんて感じさせない歌声です。

 

デビュー間もない頃のマーティのあだ名は、

Mr.Teardrops

だったとか。

佐藤さんの場合は「涙に濡れたような歌声」というより、

女殺し&女泣かせの歌声でしょうか。

ほんまにソフトでエレガントです。

実際、ツヨサンのサロンコンサートでは1曲うたっただけで、

おばさま方のハートをわしづかみにされまして、

アンコールの嵐だったんでございます。

実に艶っぽい、みずみずしい歌声で、お上手です。

歌がうまいは七難隠す

ってぼくはいつも言うてるんですけど、

今回のアルバムは伴奏も完璧で、ひとっつも難がありません。

こんなすごいアルバムがつくれたら、

ぼくなんか死んでもええと思ってしまいますねえ。

うらやましい限りです。

 

そうそう、ジャケット写真がまたいいんです。

プロのカメラマンが撮られたんでしょうか。

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ぼくがいつもお世話になっている大阪の社長さんが、

カントリー&ウェスタンがお好きなので、

このCDを持って行ったんですが、

会社の女の子が(といっても40歳くらい?)が、

えええ~~~! この人がスリムさん?

きゃ~~~~~、おかしい~~~~~

と、思わぬところでウケてしまいました。

 

以下、佐藤さんの解説をベースに、

各曲の紹介をしていきます。

お時間と興味のある方はお読みください。

 

ダイジェストで楽しみたい方はこちら!

www.youtube.com

佐藤さん、素敵な音楽を、ありがとうございました!

 

I Couldn’t Keep From Crying
マーティの初期の傑作。

1953年、ビルボードのカントリーチャートで最高5位。

これ、ぼくが生まれた年ですね。

 荻野さんのギターアレンジは、オリジナルとはひと味違うものだとか。

歌とギターがデュエットダンスを踊ってる感じがします。

 

Hurt
エルヴィス・プレスリーも大きな影響を受けた、

R&Bの人気歌手ロイ・ハミルトンのヒット曲。

この曲のメロディーもギターも、しっとりとムーディーな感じ。

意外にも60~70年代の日本のフォーク歌謡を思い出しました。

ぼくが大学時代に入っていたバンドのリーダーの千田君が、

ちょうどこんなギターを弾いて、こんな歌をうたうんです。

佐藤さんは彼よりアクが少なくて、さっぱりと清潔な感じ。

スリム佐藤というよりムーディー佐藤ですねえ。

 

El Paso
カントリーで初めてグラミー賞を獲得したマーティ最大のヒット曲。

今回、チャーリーさんの素晴らしいオーケストレーションと、

荻野さんの Del Vecchioを駆使した驚異的なギターワークで

(荻野さん曰く、ギターのバックを完成させるのに一年以上要したとのこと)、

原曲に近い雰囲気が出せたのではないか

と佐藤さんはライナーノーツに書いておられます。

Del Vecchioってギターの種類? 奏法?

 

Don‘t Worry
El Paso に次ぐ大ヒット曲。

6弦ベースを担当していたGrady Martin が

不具合のあるプリアンプを使用したために、

怪我の功名で、後年Fuzzと呼ばれるディストーションを生み出した

という伝説がこの曲で生まれたそうです。

佐藤さんのアルバムでも6弦ベースが使われています。

 

Devil Woman
1962年のN0.1ヒット。

一度は「悪魔の女」に浮気をしたものの、

優しい心根の元の恋人Maryに許され、

彼女のもとに戻る決意をした男の歌です。

若いころの佐藤さんも「悪魔の女」に手を出して、

手痛い傷を負われたに違いありませんが、

意外にさわやかに軽やかにうたっておられます。

まだ懲りてはらへんってことですね。

 

Sweet Cora
マーティの、数少ない長いナレーション入りの楽曲。

Coraとは愛する恋人(もしくは妻)の名前です。

ネットで歌詞が見つからないので繰り返し聞いて

歌詞を聴き取ったそうです。

どのアルバムにも収録されていないらしいので、

世界で唯一、この佐藤さんのCDで聴けるってことでしょうか。

それにしても佐藤さんの英語ナレーション、さすがです。

だてに通訳案内士、してはりませんわ。

 

Melba From Melboume
マーティがHank Snow のために書いた一曲。

軽快なアップテンポのナンバーです。

これも佐藤さんの歌の間でギターが踊ってるみたいな感じ。

Melboumeってメルボルンのことですね?

英語読みではメルバーン?

メルバーンから来たメルバという女の子と船乗りの

出会いと別れをうたった曲だそうです。

 

Cigarettes&Coffee Blues
たばこをスパスパ吸い、コーヒーをがぶ飲みして

失恋に耐えようとする男の歌。

英語でシガレットとタバコってどう使い分けてるんでしょうね。

伴奏ではchicken Picking という奏法でギターを弾いているそうですが、

なんでチキンなんでしょうかねえ。

 

Tonight Carmen
佐藤さんの解説では、マーティ流のTex-Mexということです。

テックスメックスってテキサスとメキシコを短くして合わせた造語で、

メキシコ風のアメリカ料理のことですよね。

メキシカンなカントリーっていう意味でしょうか。

一度は去って行った妻を再び我が家に迎える

うぶな男の無邪気でハッピーな心情を、

軽快なリズムに乗せて歌っています。

とのことです。

 

Honkytonk Man
このアルバムの中で唯一ぼくが知っていた曲です。

クリント・イーストウッド監督・主演の映画

“Honkytonk Man”(1982年)

に出てきます。

深夜放送でやってたこの映画をぼくはVHSに録画して、

すごくいい歌だったのでカセットテープに落としました。

なので曲中のセリフまで入っています。

その後、ミュージカル「Cats」を見て驚いたんです。

これとメロディーがそっくりな曲があって。

パクリ? って思ってしまいました。

佐藤さんの解説によると、

映画では主人公がこの曲の録音中に肺病の発作に襲われ、

それをMarty扮するSmokeyという歌手が引き取って完成させます。

皮肉にもMarty自身がその年、この映画の公開を待たずに、

心臓手術の合併症で帰らぬ人となりました。

ですって。へ~~~~!

 

 

佐藤さん、こんな最高傑作ができても次回作、製作してくださいね。

持続化給付金を資金にして。