うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

作家もすなるユーミンあそび

女性らしい感性を発揮していただいて

なんていうと集中攻撃を受ける時代です。

性別役割分担意識もそうですが、

男女に特有の能力や感性があるなんていうと

非合理主義、非論理的と非難されます。

 

だけどユーミンの歌には「女性らしさ」

「女性ならでは」の発想を感じてしまいます。

昭和の男ならではの固定観念なんでしょうか。

ユーミンの歌には、男には想像がつかない

「女の生理」ってものの根深さを感じて、

ああ、女性はこういうものの捉え方、

感じ方をするのかと、ときに驚かされます。

女心は男にとって永遠のブラックボックスです。

 

そんなユーミンの歌に触発された

ユーミンの同志になっちゃってそうな)

女性作家たちの作品を集めた短編集です。

読んでいると、やはり「女らしさ」を感じて、

ものによっては理解が及ばないこともあります。

 

この本、人気があるようで、

図書館で予約してから半年以上かかりました。

 

ユーミンのタイトルが、6人の作家によって

新たなストーリーへと生まれ変わる。

唯一無二のトリビュート小説集。

Yuming Tribute Stories

www.shinchosha.co.jp

 

どれが良かったというと、

もう読んだ尻から忘れてしまうので、

改めて拾い読みする必要がありました。

 

あの日にかえりたい小池真理子

いまも私の心は学生時代を過ごしたあの場所にいる。

 

これ、この感覚はやっぱり女性ならではと思います。

仲良しの女友だち二人が、共通の男友だちを挟んで、

ひとりのちょっとした内緒

(彼をアパートに泊めたことを伏せた)

をきっかけに仲たがいしてしまいます。

彼とはなにもなかったから些細なこととして、

親友には黙っていた、その沈黙が、

親友の彼女には重大な裏切り行為だったのですね。


DESTINY桐野夏生

大学職員の独身男子が心奪われた「運命の人」とは?

 

これは最近、多いと感じている「いい人」の生きづらさを

取り上げたドラマとはまた違うかな。

変化がいやで決まりきった日常を淡々とくり返す

男性が出会った運命の人。

彼の「運命の人」の捉え方に意外性がありました。

 「運命の人」ということは、

この長い人生における最大の決まりごと、

つまりルーティンではないか、と思った。

「運命の人」はルーティンという解釈が新鮮。

 

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夕涼み江國香織

かつて暮らしたポルトガルのあの光景を忘れられない。

 

結婚を控えた6歳下の妹と飲みに行く姉。

夫の浮気を不安がる妹に、自分は、と思う姉。

結婚して10年、子どもが3人、それとは別に

3度の流産も経験して、妊娠を避けたい姉は

相変わらず夜の盛んな夫に、

避妊してくれなければ別れるとまで言った。

と、しばらくしてから夫が笑顔で切り出した。

「お前のためにパイプカットしてきた」

この言葉に恐怖を感じる姉。

囚われの身になり、もはや退路を断たれた気がした……

てな寒気のする話が、

ユーミンの「夕涼み」からつくれるなんてなあ。

ユーミンの夕涼み → ポルトガルで見た老婆の夕涼み

という連想、「夕涼みつながり」から生まれたのかも。

作中にポルトガルの老婆たちの無言の夕涼みってのが、

出てくるんです。

それってほんとにあるんでしょうか。

 

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青春のリグレット綿矢りさ

離婚直前の私の心を占めるのは元彼への悔恨だった。

 

リグレットって後悔ですか。

私を許さないで 憎んでも覚えてて

ってサビが印象的な歌です。

自分からふっておいて相手に自分のことを

「許さないで」「覚えてて」と願う、

この歌の身勝手な主人公の後半生を描いた作品。

綿矢りさって読んだことがなくて、

芥川賞受賞時代の若くてかいらしい写真でしか知らないので、

こういうのを書くんやと感心しました。

 

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冬の終り(柚木麻子)

友情とも憐憫ともつかない同僚への感情の行方は?

 

この「冬の終り」だけは聴いたことなかったです。

で、いちばん理解しづらかったのもこの作品。

店内BGMでこの曲が流れたときだけ話しかけてきた

パートの同僚と、もう一度コミュニケーションが取りたくて、

ほかの職場の仲間たちと連携をとろうとする女性。

彼女を応援しようと一致団結する女性たち。

ぼくだったらそんな面倒なことしないなあ。


春よ、来い川上弘美

一度だけかなえられる能力をもつ人々が願ったもの。

「あれ」というSF的な謎が設定されていて、

最後にほんのり希望が芽生えてくる温かい作品。

これは読んだ甲斐がありました。

 

以上、ぼくの短い評だけでは

なんのこっちゃわかりませんよね。

やっぱり男が読んでも、

はあ、そうなんですか、

としかならないような……

 

小池真理子桐野夏生は区別がつかない文体で、

江國香織以降は若い人だなあという書きっぷり、

川上弘美は独特でした。

あまり縁のない女流作家の短編が、

いろいろ読めて楽しくはありました。