うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

そこまで深く重い傷を

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

 ハリウッドの大物プロデューサーが女優やスタッフなどに

性暴力・セクハラ行為を働いた事件を追う、

ニューヨーク・タイムズ」紙の記者を描いた映画です。

映画の中にはグウィネス・パルトロウの名前も出てくるし、

アシュレイ・ジャッドにいたっては顔出し出演までしています。

ぼくでも見て知ってるような有名女優が、

大物プロデューサーの餌食になっていたのですね。

プロデューサーの名前はハーヴェイ・ワインスタイン

彼のスキャンダルはワインスタイン事件と呼ばれ、

#MeToo運動のきっかけとなりました。

 

ちょうどこの映画を見ているときに、

ジャニーズ事務所の記者会見があったので、

不思議な符合を感じました。

ていうか、アマゾンプライムがそこにぶつけて、

これを公開したってことでしょうか。

www.youtube.com

 

加害者のハーヴェイ・ワインスタインジャニー喜多川

対象が違うだけで、やってることはまったく同じなんです。

性暴力が何十年にもわたって繰り返されたこと、

被害者が膨大な数に及ぶこと、

問題の本質が業界の隠蔽体質にあること、

勇気ある告発者が声をあげたこと、

その声をニューヨークタイムズ、文春がキャッチしたこと。

唯一違うのは、ワインスタインが存命で、

法の裁きを受けて収監されたことでしょうか。

日本では文春報道後も民事裁判後も

大騒ぎにはなりませんでした。

 

この映画は性暴力をそのまま描くわけではなく、

被害者によって語られる言葉のみで、

問題の深刻さを浮かび上がらせます。

見ていて気がついたんですが、

「そのくらいで?」と驚いていた自分がいたことです。

つまりマッサージをさせられたり、

自慰行為を見せられたり、

無理やり押し倒されたり、

言葉で脅されるという「暴力」が、

圧倒的な権力者の威のもとで行われることで、

被害者が一生悪夢に襲われるほどの傷を負うという事実です。

彼女らは最悪の事態を、勇気を振り絞って拒絶しているのです。

それでも、です。

決して「そのくらいで?」と思ってはいけないのです。

それは単なる暴力ではなくて、

女性の自尊心をズタズタに切り裂く行為、

人格を貶めることと一体になった所業、

人間であることの奥深くまで蹂躙する特別な犯罪だということです。

そのところをぼくはまったくわかってませんでした。

 

ジャニーズ問題でも、報道を見ていると、

被害者本人はもちろん、取材した記者までもが、

その事実を語るとき、言葉に詰まり、

嗚咽を抑えきれなくなる様子が映し出されます。

もはやあらかた人生を過ごしてきた大の男が

滂沱の涙をこらえきれないほどの心の傷を

与える行為だったのです。

そのことを加害者は想像もしなかっただろうし、

ぼくらもそうでした。

この映画とBBCのドキュメンタリーが

そのことを気づかせてくれました。

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