うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

第一夫人なかせ

なかせさんがレンタルで借りてほしいというので、

借りてコピーしたんです。

第三夫人と髪飾り

って映画。

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監督・脚本はアッシュ・メイフェアという若い女性です。

曾祖母の話から着想を得て自ら脚本を書いたとか。

19世紀のベトナムを舞台に、

14歳で富豪の第三夫人として嫁ぐ少女の物語です。

いろんな人がレビューに書いてますけど、

第1夫人、第2夫人との間で覇権をめぐって

凄絶な女の闘いや陰湿なイジメがあるのかと思いきや、

意地悪な登場人物はひとりも出てこなくて意外でした。

ぼくは第2夫人が好きだったなあ(と、そういう映画じゃないです)

 

しかしまあ風景の美しいこと。

 

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ぼくはDVDで観たので画質はいまいちでした。

ビデオカメラで撮影しているのかちょっと画面がざらつく感じで、

これはブルーレイで、大きな画面で観ないといけません。


官能的なシーンもあるけれど、

おっさんの満足度に配慮して撮ってませんから、

そこはさらっとしたものです。

蚕の生態、死にかけた馬、突然現れるイモリ、川を流れる黒髪……などなど、

いろいろなモチーフがそれぞれになにかを暗示しているようで、

好きな人はそういう象徴から監督が言わんとしていることを

読み解くといいと思います。

 

ぼくはサッと見てパッとわかりたいタイプなので、

まだるっこしい感じはありました。

そもそも人の顔が覚えられないので、

外見で服装や年齢など特徴がわからない役者さんが複数出ていると、

せっかく重要なエピソードであっても登場人物を取り違えてしまって、

正確な理解に至りませんでした。

いまだにいろいろと謎が残っています。

ベトナムの風俗があっさりとして派手派手しいものではなく、

しかも均質的で、それぞれの顔立ちも穏やかなのでよけいでした。

芸術作品をじっくり鑑賞しようという知性と感性のある人にお勧めです。

一夫多妻制度はもちろんですが、

親(家)の都合だけで結婚させるという、

現代の価値観からするとありえない因習の世界、

それが狂気を引き寄せる様、その残酷さを、

監督は静かに描き出します。

 

先ほども書きましたが、登場人物で悪く描かれている人はいないのです。

会ったこともない娘と結婚するのはいやだと花嫁を拒絶する息子も、

その息子に困り果てて、持参金の3倍返すし、

息子が嫁に一指も触れていないと保証して世間にも知らせて

また嫁に出せるようにするからと花嫁の父に申し出る父親も、

家名を汚されたとしてその申し出を拒絶する花嫁の父も、

そういう社会であればやむをえないか、

なんならそういうなかでも誠実といってもいいような人たちです。

男尊女卑、家父長制が当たり前の社会に翻弄される女性を描きたいということで、

そこに複雑な人間の業のようなものまで入れてしまうと、

映画的な統一美が失われてしまうという監督の考えからか。

 

この時代、女に生まれてよかった!

なんて女性はひとりもいなかったんでしょうか。
以下は監督の言葉です。

女性として私にはそれがどういう状況なのか理解ができなくて、

嫉妬はなかったのかと曾祖母に訊ねたことがあります。

すると彼女は静かに『忙しすぎた』とだけ答えたのです。

その時代、暮らし自体が大変で、

妻同士が互いに助け合って家事や子育てをしないと

生活が成り立たなかったと。

この話を聞いて、

アジアの女性には“痛みをバネにするパワー” が

あるのだと思ったんです。

世界中の映画祭で上映した際、

『自分たちの先祖の話のように感じた』と言われました。

この問題は世界のどこでも共感できる、

女性の歴史なのだと改めて実感させられました。

官能美の極致『第三夫人と髪飾り』はなぜベトナムで上映中止になったのか? アッシュ・メイフェア監督に聞く | nippon.com


なかせさんの感想は聞いてないですけど、

きっと永遠の第一夫人でよかったと思ってはるでしょう。