うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

漁師とピアノ

こないだ新聞で読んだんですけど、

佐賀市のノリ漁師、徳永義昭さん(60)。

「五十の手習い」でピアノを始めて、

ピアニストでも難しいというリストの「ラ・カンパネラ」を

奏でるまでになったということなんですね。

人間、いくつになっても挑戦ですねえ。

徳永さんはテレビで見たフジコ・ヘミングさんのラ・カンパネラに魅了され、

52歳からノリ漁の傍ら見よう見まねで練習を続け、

その上達ぶりが話題に。

 

ふつうテレビで見て感激しても自分で弾こうとまでは思わないですよね。

そこがすごいです。

新聞では当然わからない徳永さんの演奏はこれです。

www.youtube.com

 

徳永さん、楽譜は読めないので、

一音ごとに鍵盤が光る、ラ・カンパネラの練習動画を

ネットで見つけて、指の動かし方やリズムを一つずつ覚えたとか。

そんなんで弾けるようになるんですねえ。

実は奥さんがピアノ講師だったんだけど、

「逆立ちしても、無理」

といわれて発奮したんだそうです。

奥さんには一切習ってないんですって。

そらそやわな。

 

始めたころは、中指、人さし指、親指が太すぎて黒鍵につかえ、

その間にある白鍵の奥まで指が届かなかった。

素手でしていたノリ漁の作業は手袋をつけるようにし、

「厚くなっていた皮膚が薄くなり、指が細くなった」という。

練習時間は、長い時で1日8時間、最低でも6時間。

それで「ラ・カンパネラ」が1年目から弾けるようになった

というから驚きです。

それだけの時間毎日弾いてあきないのがすごい。

熱意と集中力ですねえ。

 

その後、なんやかやあって、

とうとう憧れのヘミングさんとの共演が実現しました。

それもまたご自分で引き寄せはった運命なのでしょう。

 

ぼくはこのニュースを朝日新聞で知りました。

見出しは、こうだったかな。

難曲ラ・カンパネラ ノリ漁師が演奏

この記事のニュースバリューは漁師とピアノという

意外な取り合わせなんだと思います。

それを「意外」と感じるのは、ぼくらのなかに潜んでいる、

漁師という職業の人にピアノのような趣味は似合わない

といった思い込み、偏見があるせいかもしれません。

これが小学校の先生だったら記事になってないかも。

そう考えると、職業差別につながる偏見をあてにして

記事と見出しをつくった記者の良識ってどうなんでしょう。

 

昔、夕刊紙の記者に、なんで「女性教師殺される」じゃなくて、

「美人教師殺される」って見出しにするんですか? と訊いたら、

そのほうが売れるからという答えでした。

社会風潮は新聞社と読者の共犯関係のうえに築かれるんですねえ。

さすがにいまでは「美人〇〇」は許されません。

 

ちなみにカンパネラは、イタリア語で「小さい鐘」を意味するらしいです。

 なかせさん、譜面があれば弾けるんかな、これ。