もう笑うた笑うた笑うた。
泣いた泣いた泣いた。
以上!
が「愛の不時着」を見終わった感想です。
世界的に大ヒットした作品ですけど、
全16話、長かった。
これを見るためにコロナ期間中、ネットフリックスに入会して、
結局「ホームランド」ばっかり見て解約してしまいました。
「愛の不時着」は1話の半分も見られなかったです。
1話からグイグイ引き込むような作りじゃなかったんですね。
あれから2年、仕事で必要になって、
8月ごろネットフリックスに再加入して、
見終わるまで3か月もかかってしまいました。
1話が90分前後、長くて2時間以上あって
ちょっとした映画なみなので、
それが16もあったら時間がかかります。
Designerが描いたイメージ画
見てる途中から、これは山田洋次監督の
寅さんシリーズだと覚悟しました。
人間っていいもんだという人間賛歌を、
くり返しくり返し見せてくれます。
(だからぼくには退屈だったのかも)
寅さんやさくら、おばちゃん、おいちゃん、
タコ社長、御前様に会いたくてシリーズを
見た人は多いと思います。
それと同じで周辺人物がよく描かれ、魅力的でした。
話の本筋は、
韓国の財閥令嬢と北朝鮮のエリート軍人の恋愛物語
というもので、
このファンタジーを巧みにリアルにドラマ化しています。
そのために脱北者を制作陣に入れて、
北の習慣、言葉を再現しているそうです。
主人公リ・ジョンヒョク中隊長が暮らす
舎宅村はオープンセットで家の内部まで緻密に作ったとか。
北朝鮮では占いが禁止なんだそうで、
浮気を言い当てられた軍人が、
妻にバレたのを恨みに思って通報し、
占い師が消えてしまうという北ならではの
エピソードも山ほどちりばめていました。
主人公の4人の部下と、隊員が暮らす舎宅村の主婦たち。
彼らとヒロインのユン・セリは当初、
反発し合いながらも次第に心を通わせて
互いを思い合うところまで親密になる過程が、
ユーモアを交えて丁寧に描かれていきます。
だからこそ、ここぞという場面でグッと涙腺がゆるむんですね。
寅さんといっしょです。
南北分断がドラマの大きな背景としてありますが、
描かれる人々の心には分断はありません。
同じ人間同士、北も南もない。
家族や仲間を大切に想う心は共通だから、
全世界でヒットしたんですね。
情に厚いのはいいけれど、
この濃密な人間関係はぼくには暑苦しいかも。
もうひとつ寅さんと共通するのは男女の描き方が、
ナイーブで健全だということ。
若い健康な男女が真剣に愛し合っているのに、
軽めのキス以上のことは起こりません。
描かないんじゃなくて、ないんです、それ以上の場面が。
あったと匂わせることもありません。
老若男女、家族も安心して見られる健全さが、
韓国ドラマらしさなんでしょうか。
しかし、ドラマづくりの技術、盛り上げ方、
意表をつく展開、伏線の張り方、回収法には驚かされます。
脚本、うまいなあって思います。
「前回のあらすじ」的な回想シーンが冒頭にあります。
日米のドラマだと、前に見た場面を編集しただけですが、
「愛の不時着」では回想プラスα、新たな種明かしを加えて、
そういうことがあったのか!
だからあの場面でこうなったのか!
と答え合わせをしてくれて納得させてくれます。
サービス精神にあふれたドラマ作法でした。
寅さんの脇を固める演技陣が素晴らしかったように、
「愛の不時着」でもほんとに達者な役者ばかりでした。
脇役全員が手練れ、もちろん主人公のふたりも。
最初のほうで出てくるスイスロケでは、
最終回も撮影したそうなんです。
途中どんな展開になるのか、まだなにも知らない段階で、
主人公たちは大団円の感動クライマックスの演技をしてるんですね。
それが違和感なく(多少あるか)見られるってのもすごいです。
恋愛ドラマ好き、ラブコメ好きにはうれしい、
こうなったら素敵! という恋愛あるあるを、
手を変え品を変え見せてくれます。
だけど、それらは全て既視感があって、
新しい感情や発見は起こりません。
すごいところはいっぱいあって、
ファンが多いのはうなずけるけど、
ぼくには最後まで長く感じられたドラマでした。
長い感想文になりました。
どうやって着地させようかと悩んだあげく、
見てみたい!
という気にさせない感想文になってしまいました。
ファンの方には申し訳ないことです。