前に読みかけで紹介した「サファイアの書」を
やっと最後まで読み終えました。
ああ、しんどー
5センチくらいの厚みがあります。
本の帯には、
『インディ・ジョーンズ』の冒険、『薔薇の名前』の謎解き(ル・モンド)
15世紀を舞台にした、聖なる宝探し(リール)
哲学なのか、秘教文学なのか、ミステリーなのか、冒険小説なのか?
これらすべてを含んだ小説、いや、それ以上の作品である
(レスト・レピュブリカン)
と好奇心をそそる惹句が並んでいます。
小説には実在の人物、都市、遺跡も多数登場しますし、
この「サファイアの書」も実際、
はるか昔に起源をもつユダヤの伝説に出てくるそうです。
『エノク第三十三書』れによれば、永遠なる神は
宇宙のあらゆる謎を記した一冊もしくは複数の知恵の書を著わした。
迷える時代に、後世の人々が彼らの基本的な疑問に対する答えを
そこに見出せるようにするためである。
これが〈ラジェルの書〉の由来である。
別の版によれば、この書は天使ラジエルからアダムに与えられ、
アダムからノア、アブラハム、ヤコブ、レビ、モーセ、ヨシュア、
そしてソロモンに伝えられた。
かの有名なソロモンの知恵も権力も、この聖なる書――
やはり伝説によればサファイアに刻まれていたという
――の知識に基づくものらしい。
したがって、この書は人類を光へと導く使命を負った
ある特定の選ばれた人々に向けられたものと考えられる。
物語の舞台は、レコンキスタ(国土回復運動)の完遂間近となった
15世紀のスペイン。
神のメッセージが浮き出るという「サファイヤの書」を求めて
イベリア半島を旅します。
彼らは同一の神を信じているわけですから、
神が発する言葉は各宗教の存亡に関わります。
そのため背後では政治的な意図、宗教的関心をもって、
スペイン統一を目指すカスティーリャの女王の部下や
キリスト教の権威の番人である異端審問官が暗躍します。
暗号文を託された3人は互いに協力しながら
「サファイアの書」が眠る場所(現存するそうです)が
どこなのかを推理していきます。
そのプロセスが、作者が最も精魂を傾けたところだし、
この小説の読みどころのはずですが、
残念ながらどんなヒントが出てきても、
聖書もコーランも読んだことのない人間にはかすりさえしません。
これって読者を選ぶ本なんです。
先生にうかがったことがあります。
すると、
そもそも救い主はいない→イスラム教
とのことでした。
これ、曖昧な記憶なので、間違ってたらごめんなさい。
しかし、選民意識じゃないけれど、
この本が読者を選ぶのも仕方のないことです。
「サファイアの書」伝説も、
「ある特定の選ばれた人々に向けられたもの」
と解釈されてますものね。
ただ各章の冒頭に金言が添えられていて、
それはぼくら無知蒙昧の民の心にも響きます。
たとえばこんな感じ。
切れた糸を結ぶことはできるが、
真ん中には永久に結び目が残る。
(ペルシアの諺)