仕事に必要で読みました。
京大というジャングルで
ゴリラ学者が考えたこと
著者は、ゴリラの研究者で、元京大総長です。
大学教育の話が中心ですが、面白いのはやはりゴリラのこと。
ゴリラと比較して人間は、という例がいろいろ出てきます。
たとえば人間の赤ちゃんは生まれた直後から大きな 声で泣くけど、
ゴリラの赤ちゃんはおとなしいんですって。
ゴリラのお母さんは生後1年間、
赤ちゃんを腕の中で育てるので、
赤ちゃんが不安になったり気持ちが悪くなっても、
体を動かしたり、低い声を立てるだけで、
すぐに気づくことができます。
一方、人間の赤ちゃんは重いし、自力でつかまれないから、
お母さんは赤ちゃんを手から放して置くか、人の手に委ねます。
人間はゴリラと違って多産で、親だけで育てきれないので、
集団で子育てをしているのです。
赤ちゃんはお母さんから離れると大声で泣く。
こんな感じです。
その赤ちゃんを泣きやまそうとして、
周囲がこぞってやさしい声を投げかけます。
これは現代も変わらない風景ですね。
その声をIDS (Infant Directed Speech=対幼児音声) と呼び、
ピッチが高く、変化の幅が広く、母音が長めに発音されて、
繰り返しが多いという世界共通の特徴がある。
赤ちゃんは、言葉で話しかけられても
その意味を理解することはなく、
声のピッチやトーンを聞いて安心するのだ。
そして、その声は習う必要はなく、
誰でも出すことができる生まれつきの能力である。
実際、この声の出し方を親から教わったことはないし、
学校で習ったこともないはずだ。
この赤ちゃんに対して発せられる声が、
音楽としておとなの間に普及することになった という説がある。
この音楽的な声によって、赤ちゃんとお母さんの間のように、
互いの境界を越えて一つになり、喜怒哀楽をともにするような
感情世界をつくり上げたのではないかと言われている。
そういえば赤ちゃんをあやす声って世界共通ですね。
赤ちゃんをあやすための声が、
やがて音楽に発展していったって話、面白いです。
赤ちゃんをあやすときは、きっと同じ声を出すのでしょう。