うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

思い人を袖に~龍の袖

坂本龍馬は江戸での遊学中、

千葉道場で北辰一刀流の兵法目録を得て、

そのとき道場主の娘、さな(佐那)と相思相愛だった

という話は、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」で読んでいました。

歴史小説という結構のなかに、佐那の登場する場面だけは、

甘い文学的表現が使われていて、

司馬遼太郎って意外にロマンチストって思った記憶があります。

 

その佐那を主人公にした小説がこれ。

図書館で借りました。

著者の藤原緋沙子さんゴメンナサイ!

龍の袖

f:id:umeharanakase:20200804065118j:plain

龍とは坂本龍馬、袖とは佐那が龍馬を想って縫った

袷(あわせ)の袖のことです。

龍馬がこの袷に袖を通すことはついにありませんでした。

袖の紋は桔梗。

坂本家はもともと明智光秀と縁があったのだとか。

初めて知りました。

そういえば「坂本」ですよね。

坂本家の先祖は江州(ごうしゅう)坂本の武将で、

坂本城落城ののち、土佐に逃れて才谷村に移住したとのことです。

 

16歳で龍馬に出会った佐那は彼に惹かれていきます。

幼いころから武芸を磨き、男勝りだった佐那は弟子を

ばったばったと打ちのめすほどの腕前です。

そんな佐那と初対面で一戦して相打ちとするほどの、

龍馬は遣い手でした。

土佐では下士という低い身分でありながら、

坂本家は藩の重役並みの領地を持ち、

本家は城下で屈指の豪商の才谷家(さいたにや)。

つねに高級な衣服を身に着け、懐にも心にもゆとりがあって、

ひとと分け隔てなく接し、話し好きで明るく闊達。

千葉道場での修業にも励み、ついには塾頭にまでのぼり詰め、

しかも次男!

婿にはぴったりじゃないでしょうか。

 

一方の佐那も女剣士として強いだけでなく、

輝かんばかりの美貌だったというのですから、

ふたりが恋に落ちないわけがないですね。

 

龍馬が土佐にいる姉に送った手紙の現代語訳が紹介されています。

この人はおさなと言います。

以前の名前は乙女と言いました。

今年二十六歳となります。

乗馬が上手く、剣術はよほどの腕前で、長刀もできます。

その力は普通の男子よりもずっと強く、

まずたとえるなら昔うちに居た「ぎん」という

名の女性と同じくらいの力があります。

その容貌は平井加尾(ひらいかお)より少し上です。

十三弦の琴を弾きます。

十四歳の時に北辰一刀流の免許皆伝を受けたということです。

そして絵も描きます。

その心映えは大丈夫であり、並の男子などおよびません。

そしてとても静かで口数は控えめです。

 

平井加尾という女性が本当にいたのか、

それとも「平たい顔」「平均的な顔」とかけた龍馬一流のジョークなのか、

お姉さんしかわかりませんね。

そのお姉さんは乙女という名前なので、

佐那とは同名だったことがわかります。

 

龍馬と佐那は両家が認める許婚となります。 

龍馬が暗殺されるのはだれもが知っているわけですから、

読者は、ただ一心に龍馬の帰りを待つ佐那がいじらしくて、

悲劇が迫りくるまでをはらはら同情しつつ読み進むことになります。

 

それに龍馬といえば「お竜(りょう)さん」じゃないですか。

佐那というフィアンセがありながら、いったい龍馬はなんで

こんな二股をかけるようなことをしたのか。

その事実に直面した佐那はお竜の存在をどのように受けとめるのか。

龍馬が暗殺されてからの佐那の後半生も描かれています。

そして最後に、えっ、そんなことがあったの? 

という記述があるのですが、

それははたして史実なのか、それとも作者の創作なのか。

そこがどうにも気にかかりながら巻を置きました。

巻末にずら~っと参考資料が並んでいたので、

おそらくは事実なんでしょう。

 

最後に佐那ってどんな人? と思って検索したら出てきました。

f:id:umeharanakase:20200804075040p:plain

ここからちょうだいしました。

honmokujack.blog.jp