今はもう昔、30代から40代にかけて、
印刷物の企画をするプランナーという仕事をしていました。
16ページとか32ページの冊子のコンセプトと、
ページネーション(ページ展開案)を考えて、
お客さんに提案します。
提案のためのデザイン見本が「カンプ」
(comprehensive layout)というもので、
これはデザイナーに原寸大でつくってもらいます。
で、デザイナーにぼくの企画イメージをわかってもらうために、
フリーハンドで描いた簡単なスケッチを渡します。
これが「サムネイル」です。
サム=親指の爪程度のささやかなものって意味でしょうか。
自分の描いたテキトーな絵がデザイナーの手にかかると、
すんごい立派な作品になるのを見るのが毎回楽しみで、
想像以上に出来がいいと、
よっしゃ! これでコンペ勝った!
と大喜びしたものです。
競合他社に連勝連勝だった30代のぼくは、
鼻持ちならない自信家になってました。
その後、負けがこんで自信を喪失し、いまのように、
とっても謙虚な腰の低いライターとなったわけですけど。
で、実はうめはらなかせの演奏って、
このサムネイルみたいなものなんです。
この曲はギター1本とボーカル2つで、
こんなアレンジができますよ
っていう企画案で、完成形とは思っていません。
めっちゃ歌とギターのうまい人がコピーしてくれたら、
このサムネイルはどんなカンプになるんだろうと
想像するとワクワクするんですよねえ。
YouTubeに上げたら世界のどこかで聴いてくれる人がいるかも……、
なんて淡い希望を抱いたままフェイドアウトしていきたいです。
今朝の絵画はサムネイルでもカンプでもない完成作品です。
葛飾北斎_雉子と蛇(19世紀 江戸時代)_5000x3739