うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

読みたて黒牢城

6時ごろ、ものすごい雷鳴でした。

空が張り裂けたみたいな大音量で。

それから一転、晴れ間が出てきました。

 

読みたてほほやほや。

話が佳境に入ったころ、

著者の父親が行方不明というニュースが出て、

へ~~~! と思いました。

読みごたえたっぷりでした。

長い間、貸出順を待った甲斐がありました

 

主人公の荒木村重は、織田信長に叛旗を翻し、

伊丹の有岡城に立て籠りますが、

城内で次々に起きる難事件に悩まされます。

籠城しているということで、

そこは巨大な密室となっています。

推理小説としては密室ものになるのでしょうか。

土牢に押し込められた黒田官兵衛

荒木村重に、事件解決のヒントを提供する

というのも面白い趣向です。

官兵衛は敵である村重をなぜ助けるのか、

その動機も謎です。

 

けれどもこの小説は単なる謎解きだけで

読ませるミステリーではありません。

もっと大きな枠組みをもった小説で、

そこに圧倒的な説得力を与えるために、

籠城の実相を、戦国の主従関係を、

武士の習わしをリアルに描き出します。

 

籠城が長引くほどに、城内の結束は緩みます。

そもそもが荒木村重の家臣だけでなく、

他家からの参加があり、雑賀衆の応援があり、

商人、百姓、職人がいて、

宗教的にも一向宗や南蛮宗などバラバラな集団です。

強力な織田軍に包囲されながらも、

派手な戦いが起こるわけでもなく、

頼みとした毛利や本願寺の援軍の気配もなく、

蓄えた兵糧を消費する日々がひと月、ふた月と続けば、

無限大の閉塞感に包まれ、どんな心も病んでいきそうです。

そのなかで不可解な事件が次々と起こり、

将たる者、これを解決しなければ人心は千々に乱れ、

籠城という戦法は破綻してしまうゆえ、

村重は謎解きに懸命になるのです。

 

ぼくは荒木村重黒田官兵衛の名前は知っている程度で、

史実として彼らがどういう最期を迎えるかについて、

知識がなかったので、よけいにこれからどうなる? 

とワクワクしながら読み進むことができました。

 

はたして戦争は平和をつくるのでしょうか。

以下の官兵衛の感慨は現代においても

さほど変わっていないのだと感じました。

 

もとはと言えば村重は、信長の戦いぶりは

世の人に容れられないと考え、

自分は違うと言おうとしたのだという。

では信長が殺し過ぎたのがすべての悪因かと問えば、

信長が殺しに殺し尽くしてゆくから

織田領国には取りあえず戦が少ないのだと、

言って言えなくもない。

つまりこの乱世では悪因が

たとえようもなく複雑に絡み合っていて、

憂き世の至る場所で悪果をもたらしているのだ。

このような世では我が子を大切に思うこと自体が、

世の習いに反し、悪因を生じる歪みであったのかもしれない。

だとすれば、やはり罪は我にある――官兵衛はそう考える。