すみません、今日は読書感想です。
岩波ジュニア新書で「重力の達人」。
著者はシビルエンジニア、
社会インフラをつくる技術者ですね。
辞書を引くと「土木技術者」とも。
この言葉を初めて耳にしたのはぼくが20代のころです。
中米のベリーセって国で、
旅の友になった西ドイツ女性に職業を訊いたら、
シビルエンジニアと答えたんです。
え? それ、どんな仕事? って訊いたら、
道路や町をつくるんだと言うんですね。
この本によると――
道路、鉄道、ダム、上下水道、河川堤防、発電所、
地下駐車場、住宅地、工業団地、貯水タンク……。
これらの公共施設を建設する土木技術者は、
遠い昔から戦争のたびに飛躍的に進歩を遂げた
科学技術の後押しも受けてきました。
英米ではミリタリーエンジニアリング(軍事工学)と区別して、
シビルエンジニアリング(市民工学)と呼んでいます。
積み重ねられた人類のあらゆる知恵と技術が総合された市民工学は、
その名の通り、人々の暮らしを守り、豊かにする市民のための工学です。
タイトルの「重力の達人」には、こうした建設事業が、
重力との駆け引きなしに成立しないという意味が込められています。
たとえば1本のもめん糸でバケツ1杯の水の重さを支えられるのは、
「吊る」というやり方で初めて可能になることで、
その考え方が吊り橋に応用されているということです。
橋脚と橋脚の間をひとまたぎできる距離は、
トラス形式(部材同士を三角形につなぎ合わせた構造)の橋で
500メートルちょっと。
これが吊り橋だと明石海峡大橋で2キロ近くに伸びるのは、
上から引っ張って重さを支えるやり方だからだそうです。
あと日本家屋の土間「たたき」ってコンクリートなんですって。
漢字で書くと「三和土」、三種類の材料を混ぜた土って意味で、
その三種類とは石灰と土と水。
これはセメントの材料と同じなんです。
それとか毛利家の「三本の矢」。
矢を3本にしたら強さが3倍になるのは当然なんですが、
これをしっかり束ねると断面が広がり、
5倍の強さ(断面係数)になるそうです。
なんて話が岩波ジュニア新書だけに平易に書かれていました。
子どもたちが将来エンジニアを目指してくれるように
という思いで書かれたんでしょうね。
ぼくには雑学の書でした。
大仏殿再建のために30メートルもある木を
どうやって奈良まで運んだかってとこも面白かったです。