今日の読書感想はマンガ本なんです。
でも難解すぎて歯がたちませんでした。
なんだけど、やっぱり面白かったんです。
去年、高校の同窓会で久しぶりに再会したYくんから、
青春時代の思い出をまとめた手記を送ってもらって、
ときどき読んでいます(まだ読み切れてない)。
理系アタマで数学が大好きなYくんが、
(ちなみに音楽の趣味はジャズ、
なのにうめなかライブに来てくれてます)
彼が中高大の学生時代を振り返る中で
登場する本は硬いものが多いんです。
例を挙げると、
岩波講座現代物理学の基礎
鈴木大拙全集
プラトン全集
世界の名著
日本の名著
ミュンヘンの小学校
といったラインアップです。
(彼が読んでるかどうかは不明)
Yくんがあげた本で唯一、
ぼくにも読めそうなのがあったので
図書館で借りました。
現代思想の遭難者たち
いしいひさいちの4コママンガ集です。
34人の思想家を笑い飛ばす!
という内容で。
という名前くらいは知ってるけど、
それぞれどんな業績を挙げた人かというと、
う~~~ん、さっぱり。
半世紀前の生真面目青少年、
Yくんはこれを読んで、
『現代の思想家というものが、
本当に信頼に足る人物なのか?』
という疑問を拭い去ることが出来なくなってしまいます。
という読後感を漏らしています。
ところが、半世紀後の老人ぼくは、
感想を漏らす以前に書かれた内容が
ほとんど理解できませんでした。
やっぱりぼくには理系アタマも哲学アタマもありません。
この本では34人の有名哲学者・思想家の考え方が、
簡潔にに解説されてるのですが、
それが難解過ぎて、日本語なのに意味不明でした。
何度読んでも頭が変になりそう。
なのに解説文の横のマンガを読んでると
吹いてしまうんです。
さすがです、いしいひさいち。
お堅い哲学者・思想家を茶化しているようで、
実はその思想に肉迫しようとしているのでは?
と見当はずれな過大評価をしてしまいそう。
たとえばハイデガー。
人間は「死への存在」――
人生に目的はなく、生まれた瞬間から一歩ずつ、
死に向かって進んでいるにすぎない、
と考えたそうですが、
そのハイデガーが、マンガの中では、
なぜかニートの支援に協力しています。
「一日中 部屋でアニメを見ています」
「自信がなくて自分の存在が必要ないんじゃないかと思えて」
というニート青年に対して、
「それだ!」
とハイデガーは喝破したように指摘します。
君の『存在』が何であって何の役に立つかは
君が決めることではない。
ゴキブリをついそこにあった新聞で叩き潰し、
ああ疲れたと ガードレールに腰かける。
つまり事態が君の存在の有用性をあらわにするのだ。
「事態が君の存在の有用性をあらわにする」
って文章がかっこいいです。
ゴキブリをつい叩き潰してしまうことを
その例として挙げてるのも妙に生活感があって、
ハイデガーを難解な哲学の高みから引き下ろします。
こういうことって現実にありそうです。
いしいマンガにおけるこの切り取り方を読んで、
以前、ここで紹介した「金閣を焼かねばならぬ」に
登場する放火犯を思い出しました。
動機の前に行為がある人です。
まず出来事が起こり、
そのあとに人間は認識する
という「発見」を教えてもらいました。
ああ、もしかして、ここにもつながる話ではないの?
心理学と哲学って親戚?
と膝を打ったわけです。
難解だけど吹いてしまうマンガ、
こんな感じです。
(申し訳ないけど、引用させてもらいます)
女性患者がフロイトに夢判断を求めて(?)
カウンセリングを受けてる図を描いた2コママンガです。
「願望」
この本、知の極みと愚の極みの創造的邂逅なんですよ。
このテイストが気になった方はぜひ、
文庫版じゃなく、単行本でお読みください。