うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

京都に原爆を

8月はテレビや新聞で終戦特集の多い月。

最近はかなり減った気もしますが。

 

日本の6月は梅雨にあたり最悪だ。

7月はまだましだが8月になって良くなる。

9月になるとまた悪くなる。

 

8月に原爆が落とされたのは上のように、

気象学者が軍に伝えたからだそうです。

目標とされた都市には京都も入っていました。

というか、京都こそが最有力候補だったと、

このドキュメンタリー番組は教えてくれます。

かなり前に録画していたのをやっと見終えました。

www.nhk.or.jp

 

いまでも多くのアメリカ人は、

戦争を早く終わらせるために原爆は必要だった、

それは多くの米兵の命を救っただけでなく、

日本人の命を救うためにもなった

と信じているのではないでしょうか。

ところが、当時の米軍最高責任者、トルーマン大統領は、

そうした明確な意思をもって、

原爆投下を命じていないことが、

最新の研究からわかってきたそうです。

 

原爆投下を巡る決断は軍の主導で進められ、

トルーマン大統領は、その方針に対して、

続行とも中止とも、はっきりした指示を出さず、

広島・長崎への投下で市民が犠牲になることについても、

気づいていなかった可能性があると研究者は指摘しています。

 

京都の人間としていちばん気になったのは、

原爆計画の責任者を務めていたレスリー・グローブス准将が

京都に原爆を落とすよう強く進言していたことです。

原爆目標は、

人口が集中する地域で、直径が5キロ以上の広さがある都市。

それも8月まで空襲を受けず破壊されていない都市が良い。

という条件で選ばれて、17都市が候補とされました。

 

なかでも京都を第一候補にあげた理由を、

インタビューで次のように話しています。

 

京都は外せなかった。

最初の原爆は破壊効果が隅々まで行き渡る都市に落としたかった。

京都は住民の知的レベルが高い。

この兵器の意義を正しく認識するだろう。

 

京都に固執したグローブスは6回以上も、

陸軍長官のヘンリー・スティムソンのもとに通います。

爆撃機の部隊は当時、陸軍の管轄下にありました)

 

スティムソンはグローブスの要求を6回以上退けて、

最後はトルーマンに、京都は目標から外すよう求めました。

その理由をナレーションではこう語っています。

この戦争を遂行するにあたって気がかりなことがある。

アメリカがヒトラーをしのぐ残虐行為をしたという

汚名を着せられはしないかということだ。

スティムソンはこの頃激しさを増していた日本への空襲が

国際社会が非難する無差別爆撃にあたるのではと危惧していました。

これ以上、アメリカのイメージを悪化させたくなかったのです。

 

彼が人道主義者だったとか、京都の文化財を惜しんだとか、

そういうことが理由ではありませんでした。

(もしかするとそれは心の内に多少あったかもしれないけれど)

ただし、京都を2度訪ねたことがあるスティムソンは、

原爆を投下すれば、多数の市民が犠牲になると知っていました。

京都を外した理由はアメリカの対外イメージ、

すなわち国益を守るためでした。

 

京都が第一目標から外れると自動的に広島が繰り上がります。

市民の犠牲を出したくないという大統領の意向を知っていた

グローブスたちは、原爆によって一般市民を攻撃することはない

という報告書を提出し、トルーマンをあざむいたことになります。

後に事実を知ったトルーマンは不作為の作為を後悔しますが、

誤った決断をしたとは決して言えません。

そして苦肉の言い訳ともいえるような、

戦争を早く終わらせ多くの米兵の命を救うため

原爆投下を決断したという論理で、
市民を大量虐殺した責任を追及されないよう、

言いつくろったということになります。

その論理がいまもずっとアメリカ人が内心で感じている(であろう)

後ろめたさにフタをしているように思います。

 

このドキュメンタリーに登場した研究者たちは、

准教授レベルの若手でした。

いつかアメリカの新しい歴史認識

常識になるときが来るかもしれません。

 

あと半年、3か月、あと1か月、

少しでも早く戦争が終わっていれば、

犠牲ははるかに少なかったはずです。

その決断をしなかった日本の上層部も罪深いといえます。

この戦後スペシャルドラマでは、

決断することのなかった軍人の罪を描いています。

百合子さんの絵本――陸軍武官・小野寺夫婦の戦争

www2.nhk.or.jp

連合国の事情を知らなかったから和平ができなかったのではなく、

正確な情報が北欧の駐在武官から届いていたにもかかわらず、

それを知る立場にいた高官たちが既読スルーし、

決断を先延ばししたために、和平工作が遅れ、

一気に犠牲が膨れ上がってしまった経緯がわかります。

 

こういうドラマやドキュメンタリーを見るたびに、

NHKは受信料ぶんの仕事はしてるなあと思うんですね。

だけど、もっと安くしてちょうだいね。