うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

心と体と鹿と牛と

2017年ベルリン国際映画祭 金熊賞<最高賞>など4冠の快挙!

といううたい文句に惹かれて見ました。

ハンガリー映画って珍しいので、

生活風景や風俗的な部分でいろいろと面白かったです。

とくに映画の中やエンディングで流れる歌は、

なまりのある英語の発音がもの悲しく響きました。

心と体と

senlisfilms.jp

 

内容については、サイトにある通り。

コミュ症の若い女性と初老男性との恋

と要約してしまいましょう。

面白かったけど映画の内容とは別な感想を抱きました。

 

映画の舞台はブダペスト郊外の食肉処理場

ということで屠畜シーンが映ります。

初めて見るわけではないけれど、心が騒ぎます。

ぎゅうぎゅう詰めの群れから牛が一頭押し出されて、

ケージのなかに囲われて数秒。

衝撃音とともに牛がくずおれて解体されていく過程は、

見ていて苦しいものがあります。

ナチスの収容所のようでもあります。

いくら人間が生きていくのに必要だからといって、

こんなことが許されていいのだろうかと思ってしまいます。

 

もしも毎朝1分、いや、10秒でも、

屠畜シーンを見ることが義務づけられたなら、

ぼくは一生肉が食べられない気がします。

タバコの箱に「喫煙は肺がんの原因となります」と

注意書きされているように、焼肉店でも、

「肉食は罪のない牛を虐殺することです」

という表示が義務づけられる時代が来たりしてねえ。

 

映画の冒頭で、オスとメスの鹿が餌を探したり、

水を飲む場面があります。

冬の森です。

厳しい自然のなか、寄り添って生きる二頭の姿は、

「生」の美しさ、切なさを訴えかけてきます。

もしかして銃声とともにどちらかが倒れるのでは?

という不安感を残しながら、映像は食肉処理場へ。

そこから不器用な男女の物語が始まります。

静かで透明な映画です。