久しぶりに半村良の伝奇小説を読んでるような、
ワクワクする気分で楽しみました。
乾緑郎「忍び外伝」。
第二回朝日時代小説大賞を受賞した作品です。
(第一回は受賞作なし)
「表現力も抜群ならば、文章も秀逸」(児玉清)
「思わずソクリとする伝奇的設定」(縄田一男)
「筆力・構成力は、尋常ではない」(山本一力)
と選考委員が絶賛しているというので手に取ったら、
期待通りの傑作でした。
歴史的事件がするするするっとつながっていって、
時空を超えた大団円、ああ、こりゃこりゃ。
めくるめく読書の快感がありました。
いくつか言葉の解説で面白いなと思いました。
「忍」という字は、刃と心の二字を以て一字を成す。
忍びを忍びたらしめているのは、この二つである。
伊賀を出て行く者が捨てるのは、
技を意味する「刃」の方ではなく、
その思想信条を意味する「心」の方だ。
いまでいうと仕事人が持つべきスキルとパッションでしょうか。
どんなにスキルがあってもやる気がなければなんにもできません。
人間には刃と心が必要ってことですね。
とくに専門職種はこのスキルへの誇りが高いだけに、
心を忘れがちってことの戒めもあるのでしょうか。
本来、「くノ一とは、「九ノー」のことである。
目が二つ、鼻が二つ、耳が二つ、口、臍、肛門の、
人体の九個所の穴に、女の場合はもう一つ穴が加わる、
という意味で、古くから女を示す隠語として使われてきた。
これが転化し、伊賀では三字を一字として女の忍びをくノーと呼ぶ。
へーーー、忍びでなくても女はすべからくくノ一なんですねえ。