うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

バファロー大隊の謎

ジョン・フォード監督の映画が好きなんです。
ほとんどの作品は何度も見ている気がします。
そのなかで「バファロー大隊」

あんまり見る機会がなくて、10年以上前に一度見たきり。

こないだ、たまたまBSでやってたので録画して見ました。

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(映画パンフレット)バファロー大隊(〈監督 ジョン・フォード〉〈出演 ジェフリー・ハンター、コンスタンス・タワーズ〉) / 伊東古本店 / 古本、中古本、古書籍の通販は「日本の古本屋」

これが面白いんです。

西部劇なのに法廷劇でもあります。

いかめしい軍法会議の場に不似合いな、

ピンクのドレスを着た、派手でかしましい将校連中の奥様方を

ユーモラスにあしらいつつ、

事件への興味を引いていく導入部の構成はなかなかです。

証人の証言とともに回想場面が挿入され、

事件の全容が少しずつ明らかになっていく展開は

見る者を飽きさせません。

 

西部劇であり、法廷劇であり、回想劇であり、
シリアスな黒人差別の問題をめぐって人間の尊厳を問いつつ、
真犯人探しの謎ときもあるという盛り沢山な娯楽映画です。
(犯人が実に意外! 推理もむりやりっぽい)

黒澤明がお手本にしたというのもよくわかります。

(「羅生門」は1950年なので、ジョン・フォードはこれを参考にしたかも)

 

物語の舞台は明治維新よりも半世紀近く前のアメリカ西部。
黒人兵中心に編成される第9騎兵隊の少佐の娘が犯されて殺害され、
娘の父親もまた銃で撃ち殺されるという事件が起こり、
現場に居合わせた黒人曹長に容疑がかかります。

この当時から検察官はすべての証拠は隠蔽してはならない
という規約が軍法会議においてすら定められていたようで、
そこはフェアな印象を与えます。

あと時代を感じるのが「クレイジーウーマン川」って地名。

いまでもそのまま残ってるのかしら。

 

本作では黒人軍曹ラトレッジが無実の罪を着せられて裁かれるので、
原題は「SERGEANT RUTLEDGE」曹長ラトリッジ)。

これはわかるのですが、
邦題の「バファロー大隊」はどこにも出てきません。

弁護士役を務める若い中尉やラトリッジ曹長が所属するのは第9騎兵隊です。

ただオープニングシーンや中盤で流れる歌が、

勇猛果敢な理想の兵士をうたった「キャプテン・バファロー」というもの。

 

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ちなみに「バファロー」というのは、

冬にインディアンの討伐に行った騎兵隊の大尉が

バファローの毛皮を着ていたので、

「バファロー大尉」と呼ばれて恐れられたというエピソードが

会話の中に出てきます。


というわけでこの邦題が、歌のタイトルからの引用だとすると、

「バファロー大尉」が正しいのではないでしょうか。

もしかして、最初は「バファロー大尉」だったのが、
誤植かなにかで「バファロー大隊」になったのでは? 

とぼくは推理します。

1960年の映画だから真相を知る人はいないでしょうけど。