うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

三十九人の刺客

こないだNHKで放映された「十三人の刺客」を見たんです。

これ、てっきりリメイクで映画化された作品だと思ってたのが、

実はNHK製作のスペシャル時代劇でした。

f:id:umeharanakase:20201208084638p:plain

十三人の刺客 - NHK

途中から、なんかおかしいなあ、こんな配役だっけ?

あのシーンはおぞましいからカットされたの?

橋の爆破シーン、ちゃっちぃなあ…………

とかって思いながらも最後まで映画だと思ってました。

 

こんな大作をテレビ局がつくるなんてねえ。

と感心してウィキペディアを見たら1990年にも

仲代達矢主演でリメイクされてたんですね(フジテレビ)。

これは見てませんでした。

 

ぼくが見たのはオリジナルと、2010年のリメイク映画、

そして今回のNHK版です。

異常に暴虐な明石藩主(将軍の弟)の老中就任を防ぐため、

ひとりの旗本に暗殺の密命が下るというストーリー。

旗本は仲間を集め、国元へ帰る明石藩一行を襲撃します。

 

【主な配役】

        1963     2010    2020

島田新左衛門  片岡千恵蔵    役所広司    八代目中村芝翫

島田新六郎   里見浩太郎    山田孝之    福士誠治

山九十郎   西村晃      伊原剛志    神尾佑

 

明石藩藩主   菅貫太郎       稲垣吾郎     渡辺大

鬼頭半兵衛   内田良平       市村正親     高橋克典

 

やっぱりオリジナルのモノクロ版が印象に強くて、

順位をつけるならオリジナルと2010年版は僅差でオリジナルの勝ち。

NHK版はちょっと差がついての3位という感じです。

 

2010年版で強い印象に残ったのは稲垣吾郎の殿様。

まあ、悪逆非道のサイコパスみたいな殿様が似合ってたこと。

 

脚本が池宮彰一郎なんですねえ。

大好きな時代小説作家で、四十七人の刺客」「島津奔る」は傑作です。

後者は盗作疑惑で絶版になったけど、若干の注釈をつけて再版してほしいです。

わずかな類似点を問題視するのではなく作品全体を評価すべき。

ほんとうに残念なことです。

 

でも、「十三人の刺客」で腑に落ちないところがあるんです。

まずは襲撃する側の装束ですが、「四十七人の刺客」では、

赤穂浪士は火消装束とか鎖帷子を着こんで吉良邸に赴きます。

真剣の闘いでは防具を整えていたほうが安心感があって、

肝心のときに一歩前に踏み込めるからです。

四十七人の刺客」の場合、討ち入りは冬だったので、

鎖帷子は着込むと暖かく保温効果があったことも利点でした。

しかし、「十三人の刺客」はたすき掛けと鉢巻き以外

特段の装備はなかったです。

準備期間も予算もいっぱいあったのに。

冬じゃないから着込むと暑くて、なおかつ重い防具は

行動の妨げになると判断したのか…………

それなら謀議の際、そういうセリフがほしかったかなあ。

 

もうひとつは映画のハイライトシーンで、脚本の要でもある、

落合宿を要塞化して、そこに明石藩一行を迎え入れるという策。

こんな見え見えの罠に引っかかるでしょうか。

警戒しつつ動いている明石藩一行が物見を放っていないのがおかしい。

進路を事前に偵察していれば、こんな罠にかかりそうもありません。

映画の見せ場をつくりたかったんでしょうねえ。

無理やり感がどうしても漂います。

それだったら藩士を無残に殺されて恨み骨髄の尾張藩の協力を得て、

藩内の通過を許可する代わりに人通りの少ない一本道を行かせ、

長い行列になったところを襲撃するほうが合理的です。

13人対53人という多勢に無勢感はありますが、

弓矢や投石で明石側の戦力を減じておいて襲撃するってことで。

それもいきなり大刀ではなく槍を使うのがいいんじゃないでしょうか。

 

以上、不満を書きましたが、それでも「十三人の刺客」は

見ててワクワクする最高のアクション映画であることに変わりはありません。

七人の侍」ほど大作って感じでもなくて、

スピード感をもって一気見できるのが魅力です。

3作見たけれど、またリメイクが見てみたいです。