うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

妻が椎茸だったころぼくはユリ根だったかも

読者レビューを読んで興味をひかれたのと、

タイトルが面白かったので、

図書館で借りて読みました。

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中島京子では以前に、明治初期日本中を旅した外国人女性を

案内した青年の話「イトウの恋」を読んだことがあって、

それとはまったく趣きの異なる短編集でした。

 

この人の作品はリーダビリティがめっちゃ高い。

後ろから背中を押されてるみたいにすいすい読めます。

後押しをしているのは謎の存在ですかね。

作者が文章にほのめかした謎の正体を知りたくてページを繰ります。

なので、ほかの読みかけの本を差し置いて、

あっという間に読めました。

 

表題作も含めて5つの作品を収めた短編集です。


「リズ・イェセンスカの許されざる新鮮な出会い」
ラフレシアナ」
「妻が椎茸だったころ」
「蔵篠猿宿パラサイト」
ハクビシンを飼う」


泉鏡花賞受賞作らしいです。

たしかに幻想と怪奇の世界が立ち上がります。

SF小説の世界にはセンス・オブ・ワンダー

という言葉がありまして、

不思議さに驚く心、ですかね。

そのセンス・オブ・ワンダーあふれる短編集です。

若い頃に夢中で読んだ小松左京筒井康隆の作品に通じる面白さでした。

 

ぼくは1作目の日本人女子留学生が出会った

未亡人の話が、ホラー風味で楽しめました。

表題作は先だった妻が残した料理メモを読んでいて、

「わたしは椎茸だった」という一文を見つけた夫が

妻が生前に予約していて行けなくなった料理教室に参加して

不思議な体験をするという話。

 

まあ、どれも心に残るというよりは、

ひととき日常を忘れ、異世界に遊べるという感覚でしょうか。

ちなみにぼくの前世はユリ根だった気がしますねえ。

なかせさんはコンニャクイモかなあ。