って小説を読んだんです。
キンドルは主に外出時に持ち歩き、
移動中とかなにかの待ち時間に続きを読むという使い方です。
なので外出しないときが続くと全然読み進めません。
数か月も空くと続きが思い出せず、
没入するまで時間がかかったりします。
そんなわけで、読み始めてから読了まで2年ほどかかってしまいました。
「ベルリンは晴れているか」って、
「パリは燃えているか」からつけたタイトルなのかしら。
こんなあらすじです。
1945年7月。
ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4ヵ国統治下におかれたベルリン。
ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、
ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、
ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる……
まるでその時代、その場所に生活したことがあるかのように、
物語の情景が匂いまでも立ち上がってきそうな描写です。
街並みや料理、地理、風俗だけでなく、連合国間の力関係、
軍隊の組織、当時使用された兵器やその効果まで、
ベルリンのがれきの中を生きる人たちなら
当たり前に知っているような事柄が当たり前のように語られます。
おそらく、これをドイツ語訳にして当時を知るドイツ人が読んでも
違和感を覚えないのでは? と思えるほどです。
著者は深緑野分(ふかみどり・のわき)。
ペンネームでしょうか。
2019年本屋大賞第3位、第9回Twitter文学賞国内編第1位に輝く。
とウィキペディアにあります。
驚いたのは著者が1983年生まれの女性で、
まだ30代半ばという事実。
これを調べて書いたのはもっと若いときでしょうから、
その力量に舌を巻きます。
歴史ミステリーということで最後に謎も明かされますが、
それよりもロードムービーのように各地をさまよいながら、
ときに思い返される過去のエピソードが秀逸です。
とくにユダヤ人が抑圧され、狩り立てられていく状況で、
非人間的な、もしかするとそれこそが人間的な、
といえるかもしれない凄惨な出来事が描かれて、
人間の罪の重さに圧倒され、言葉を失います。
自分がドイツ人なら、これは読むのに苦痛をともなうかも、
と感じました。
なぜ彼女はこの時代、この国を取り上げたのか。
ここにインタビュー記事がありました。
こういう若い人の力業を見せつけられてしまうと、
この国は早く若い人に任せたほうがいいなと思います。
こんな非常時なのに何もかもがゆっくりにしか進まない
いまの状況を見るにつけ。