うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

ただ消え行くのみ

最近、寝る前の読書習慣が復活してきました。

これまでな寝る前に録画したドラマとか見てたんですけど、

それだと寝つきが悪くなってしまって。

で、何年も前から読みかけのままだった本を開いています。

 

いまとりかかっているのは分厚いノンフィクションの下巻、

「ザ・コールデスト・ウィンター朝鮮戦争

 

昨日読んだのは連合国軍最高司令官であり、国連軍司令官だった

ダグラス・マッカーサー将軍がトルーマン大統領に解任されるくだりです。

合衆国議会での有名な退任演説も出てきます。

 

今わたしは、五十二年におよぶ軍歴に終止符をうとうとしています。

わたしが陸軍に入ったのはまだ世紀が代わる前で、

当時は少年時代の全ての希望と夢がかなったように思えたものでした。

陸軍士官学校の校庭で宣誓をしてから、世界は幾度となく転変を重ね、

あの希望と夢はとうの昔に消え失せてしまった。

しかし、今なお、わたしは、あの時代よく兵士がうたっていた

バラードの一節をまざまざと思い出すのです。

誇り高く歌いあげていたしみじみと心に染みわたるあの一節を。

―――老兵は死なず。ただ消え行くのみ。

そう、あのバラードの老兵のように、

わたしはいま軍歴を終え消えて行くのです

――神に光を与えられて自らの義務を知り、

その義務を果たそうとした老兵として。

さようなら

 

なんと謙虚な職業軍人の奥ゆかしい演説に聞こえますが、

この本の中ではこう評しています。

この国でもっとも厚かましい部類にはいる人物のことばとしては、

一見控えめなことばだった。

かれには消えゆくつもりなど毛頭なかった。

それはともかく、この演説を読むと、

あの「老兵は死なず。ただ消え行くのみ」

というフレーズは兵士の歌の歌詞だったことがわかります。

ウィキペディアによると、

兵隊歌『Old Soldiers Never Die』のスタンザ

老兵は死なず、単に消え去るのみ」を短縮したものである。

そのスタンザがこれ。

Old soldiers never die,
Never die, never die,
Old soldiers never die,
They simply fade away.


『Old Soldiers Never Die』は、

ゴスペル歌『Kind Thoughts Can Never Die』の替え歌で、

元々はイギリス陸軍の将兵によって歌われていた。

 

へーーー、ちなみにスタンザとは、

定型詩を構成する数行を、

1つのまとまりとしてとらえるための単位

だそうです。

で、ネットを探してみると、

実際の歌が出てきました。

ビング・クロスビーのはきれいすぎるので、

こちらを選びました。

www.youtube.com

 

fade away~~~のところ、

ジョン・ウエインの「黄色いリボン」聴いた気がします。

 

マッカーサーはただ消え去るのみといいながら、

自分の人気がどれくらいすごいかよくよく知っていました。

これも本から引用しますと、

 

いたるところでマッカーサーを一目みようと大群衆がくり出した。

まず東京では、出発に際して二十五万人ほどの日本人が街頭に列をなし、

その多くが涙を流し、日米両国の小旗を振った。

真夜中過ぎに立ち寄ったハワイでも大群集が集まった。

サンフランシスコでは、またもや真夜中すぎにもかかわらず、

それを上回る大勢の群集がマッカーサーを迎えた。

群集が多すぎ、興奮していたので、警備陣は押しとどめることができなかった。

ついにニューヨークに入って紙テープの舞うパレードに臨んだときには

七百万人が繰り出したという。

アイゼンハワー第二次世界大戦から凱旋したときに集めた群集の二倍である。

反響は引きつづき感情的だった。

「大統領の将軍解任をきっかけに起きた政治的激情の爆発ほど、

激しくて自然発生的なものがかつてこの国にあったとは思われない。

南北戦争以来、これに匹敵するものがなかったことは確かである」。

これほどの人気だったから、

彼を解任したトルーマンは戦々恐々としていたそうです。

が、このあとマッカーサーの化けの皮は少しずつはがれていきます。

どんなに自分勝手で横柄で時代遅れで間違いだらけの言動をしていたか。

そこはこれから読むところなんですが……