うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

インディアナポリスの悲劇

また見ましたがな、映画。

「パシフィック・ウォー」

アマゾンプライムで。

今度、値上がりして4900円になるんですって?

退会したほうがいいかなあ。

見放題だとテレビばっかり見てしまうし。

 

さて、パシフィック・ウォーって

漠然として意味不明のタイトルですけど、原題は、

「USS Indianapolis: Men of Courage

先の大戦で日本の潜水艦に撃沈された、

アメリカの重巡洋艦インディアナポリスの物語です。

 

ぼくは中学生の頃、戦記が大好きで、この史実、読んでたんです。

「伊58帰投セリ」というタイトルだったと思います。

原爆をテニアン島まで運搬するという秘密任務を終えた、

インディアナポリスは、次の目的地への航行中、

伊58潜に雷撃され沈没します。

海に投げ出された乗組員たちは次々とサメの餌食に……。

それを読んだときは正直言って、

広島と長崎に原爆を落とした敵に一矢報いてくれたと、

子ども心に快哉をあげてたと思います。

まあ、素朴な愛国心ではありました。

 

で、この映画ですが、出来はよくありません。

CG部分も実写もいまいちリアリティーと迫力に欠け、

筋運びがスムースじゃない。

 

出港前、水兵たちの青春活劇

重巡VS.潜水艦の戦い

日米両艦長の苦悩

原爆・回天という非人道兵器

沈没後、漂流中のサバイバル劇

帰国後の軍事法廷

いろんな要素を詰め込み過ぎて消化不良を起こしたのでしょう。

すべて中途半端になって、散漫な印象が残りました。

 

しかし、この映画、歴史を知るという点では意味があります。

生き残って帰国したマクベイ艦長は世間の批判にさらされるのです。

犠牲者の遺族からくり返し責められます。

しかも軍法会議にかけられ、有罪になったということです。

判決が確定し、その後、妻にも先立たれたマクベイは拳銃自殺します。

アメリカでもそういうことがあるのですねえ。

ジグザグ運動を怠り、敵の攻撃を招いたという罪です。

 

大戦末期、日本海軍は人間兵器、回天の使用に踏み切っていました。

普通の魚雷と違って、人間が操縦する回天の場合、

ジグザグ運動をしても避け得ないとして、

マクベイ艦長は部下の進言を退け、直線コースを指示していたのです。

 

ここで興味深いのが、この軍事法廷に、

インディアナポリスを撃沈した、

伊58の橋本艦長が弁護側証人として出廷したことです。

これは知らなかったなあ。

橋本艦長は、たとえインディアナポリス

ジグザグ運動をしていたとしても避け得ないほど、

至近距離から魚雷を発射したと証言します。

 

そう、「伊58帰投セリ」にも出てくるのですが、

回天は人間が操縦するといっても、

現代の誘導兵器のように必中ではないのです。

最初に敵艦の位置のあたりをつけて、

あとは推測で進んでいって艇をぶつけるのみ。

しかも、いったん母艦を離れたら、

敵にあたらなくても生きて帰ることはほぼ不可能でした。

橋本艦長は、戦果が確実視できないのに、

若い搭乗員を死地に送り出すことへのためらいを持ち続けていました。

映画ではこういう部分も描いてほしかったんですけどね。

したがって橋本艦長はインディアナポリスを攻撃するときも、

回天ではなく通常の魚雷攻撃を選択します。

 

戦後は神職についた橋本艦長ですが、

有罪判決を受けたマクベイ艦長の名誉回復に尽力したそうです。

このへん、サムライスピリッツを感じますよねえ。

ウィキペディアには、

2000年、アメリカ合衆国議会はマクベイ元艦長の記録は

「彼はインディアナポリスの損失に対し無罪である」ことを

反映すべきだという決議を可決した。

10月30日にビル・クリントン大統領もこの決議にサインした。

しかし、マクベイ元艦長の名誉回復に尽力していた橋本元中佐は

5日前(10月25日)に死去していたため、

その知らせを聞くことはできなかった。

とあります。