なかせさんは子どもの頃からピアノを習ってはって、
これがまた想像以上に上手でぼくはびっくりしたんです。
譜面を見て、すぐに弾かはるんですよね。
これは譜面の読めないぼくからしたらすごいことなんですけど、
あ、そこのコードきれいですね、なんちゅうコードですか?
と訊いたら、知らないって返事なんです。
ピアノのレッスンではコードを習わなかったそうで、
ギターみたいにコードだけ見て伴奏するなんてことができないんですって。
あれだけ弾けるのに、簡単なコードのアルペジオみたいなんもできんって、
信じられませんでした。
譜面があると弾けて、ないと弾けなくなるというのも驚き。
ソフトウェアがないと動かない自動機械のようです。
一方、なかせさんはユーミンのメロディーを覚えるのが苦手で、
それはコードがわからないこととリンクしてるのではと最近思うんです。
なかせさんが苦手そうなメロディー、たとえば「雨のステイション」。
これ、キーがGmaj7で、出だしの「あたらしい」ってとこのメロディーは
和音をそのまんま鳴らしたソ・シ・レ・ソ♭・レ、ですね。
(ユーミンのキーはAmaj7、ハイファイセットはDmaj7)
だけど、そのまんまじゃ面白くないから、コードはCmaj7.にしたのでしょう。
これってカーペンターズの「Close to you」がキーはGmaj7なのに、
C9から始まるのと似ています。
(すみません! Cmaj7とGmaj7のところ書き間違いしてます)
作曲するときに、たららんとGmaj7を弾いて、
コードにある音をうたいながら、コードとハモりながら、
伴奏をつけていった感じが想像できます。
サビの「雨のステイション」とうたうところがGmaj7、
そこから「会える気がして」の「会える」からCmaj7になって、
「気がして」の「が」のところでBm7。
これはラの音で、Bmに対してちょうどセブンス。
ここをBmのコードを弾いてうたうと、きれいにハモれるんですね。
それがとても気持ちよくて、もうBm7は必然だろうと思うんですけど、
コードを感じずに、ただメロディーだけ素でうたうと、
単に変わったメロディーってだけになると思うんです。
なかせさんは弾き語りをほとんどしないので、
楽器が鳴らすコードとハモるという感覚がない。
だから必然的にコード感を大事にしているユーミンのメロディーは
覚えにくいのかな、というのがぼくの推理です。
40年以上前でしたか。
「暮らしの手帖」に作曲家の服部良一が連載ページを持っていて、
そこで音楽界に登場したばかりの「荒井由実」を絶賛していました。
コード進行がありきたりじゃない、工夫している
と。さすが大作曲家、すごいって思いましたね。
今日の日記を書いていて、そんなことを思い出しました。