新聞の身の上相談のコーナーをよく読んでます。
こないだ50代の女性からの相談が掲載されてました。
恩師であるピアノの先生の妹がバイオリニストで、
この人からコンサートを開くからと言われて、
タウン誌やご近所に宣伝してあげて、
自分も券を買わされたそうです。
すぐにまた次のコンサートがあって、
今度はチラシを近所に配るようにと送られてきました。
この相談者は知人にチケットを買ってくださいと頭を下げて、
その多くから「興味がないので、ごめんなさい」と断わられたそうです。
ようあることですね。
それでもコンサートには地元の新聞社が取材に来て、
記事の見出しは「ご近所への恩返し」だったとか。
笑ってしまいますね。
相談者はそれを読んで気分を害します。
人が足を運んでくれたことに感謝するどころか、
まるで「自分の素晴らしい芸術を聴かせてやった」
といわんばかりだったからです。
次のコンサートは、かなりの人から断られたと、
相談者は書いています。
回答者は美輪明宏。
もちろん、そんなお世話をする必要は一切ありませんという答えです。
「私が知っている限りの方々にお声がけして、
一度は多くの方が義理で足を運んでくださいました。
でも2度目は難しいです。断られました」
と正直に言いなさいとアドバイスしています。
さらに厳しいことを書いてはります。
クラシックに限らず、芸術家と称する人のなかには、
「自分より優れた芸術家は他にない」と思い上がったり、
勘違いしたりしている人も、結構いらっしゃいます。
そういう人は、そもそも感謝するという事はありません。
だから、手伝ってもらっても、お礼なんか言いません。
むしろチケットを売ってもらって当然だと思っていて、
「あの人には私の世話をさせてやっている」
といった感覚なのではないでしょうか。
そうですよねえ。
そもそもなんで恩師の妹だからといって、
この人がチケットを売ってあげなきゃいけないのか、
まったく理解できません。
そんなお人よしがほんまにいるんやろかと思ったら
身近にいてるんです。
なかせさんです。
ご近所の独居老人の方の世話を焼いてはります。
なんで親戚でもなんでもないのに、
おまけに立派な息子さんもいてはるのに、
私がそこまで世話したげんとあかんの?
となかせさんが言わはるので、
「知らんがな」としか答えようがないんですよねえ。
どうしてなかせさんがそこまで親身になってはるかがわかりません。
お人よしって、そういうもんなんでしょう。
新聞の身の上相談に話を戻すと、
義理でライブに行くってことはようようあることで、
それはなんにも悪いことばっかりではないと思うんです。
行く側にしたら意外な人と会えたり、知らない楽しさを発見したり
ってことがあるかもしれないし、招いた側は、
義理で来てくれた人にええ演奏を聴いてもろて
笑顔で帰っていただくよう精一杯おもてなしの努力する。
そうして「義理で行ったけど、まあまあ良かったな」って
最後に思っていただければいいですよねえ。
難しいことですけど、気持ちはそうありたいです。