うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

歌詞の意味

歌詞の意味には興味なし 高齢者からは「違和感あり」の声も

という記事がありました。

「歌詞に意味は必要か」という疑問が

ネット上で何度も議論になっているといいます。

そこである会社が全国20~60代の男女11357名に

アンケート調査したそうです。

全体で見ると、歌詞の意味に興味がないことに

「自分もそうだ」や「共感する」と答えた人は少ない。

©sirabee.com

しかし「理解はできる」と答えた人は39.5%もおり、

歌詞の意味を重視しない人の気持ちを尊重する傾向もあるようだ。

「音楽だから、いいメロディーやアレンジを重視する気持ちはわかる」(30代・男性)

ぼくも若い頃に同じような疑問をもっていました。

フォークは歌詞が重要だと思っていましたが、

洋楽の場合、聴いてもただちに意味はわかりません。

歌詞を知るという行為と音楽を聴くという行為は分断されていました。

 

こんなんでぼくは本当に音楽を聴いているといえるのだろうかと、

若さゆえ生真面目に考えていたところ、

雑誌でポール・サイモンの発言を読んで、おっ! と思いました。

「聴衆は歌詞なんて聴いてない。サウンドを聴いているだけだ」

と、そのような意味のことを語っていたのです。

 

そうなのかと目から鱗が落ちる気分でした。

あのサウンド・オブ・サイレンス」

を書いたサイモンにして、これです。

同じ英語圏の聴衆であっても歌詞よりサウンドなのだと。

じゃあ、日本人のぼくが歌詞がわからなくても別にいいんじゃない?

 

実際、歌詞がわからなくても歌には感動するものです。

九ちゃんの「上を向いて歩こう」は日本語でうたわれて

全米で、世界で、大ヒットしました。

歌詞の意味はわからなくとも感動できるし、歌は伝わります。

その感動が偽物だととはだれにも言えません。

 

 

それなら歌詞などなんでもいいかというと、

そんなことはまったくありません。

やっぱり歌詞は大事だと思います。

 

たとえば、はっぴぃえんどの「風をあつめて」

作詞者の松本隆自身が、この歌の歌詞には意味はない、

ただ街をぶらついてるだけの歌。なんで人気があるかわからない

というようなことを語っていました。

だけど、その歌詞を読んでみると――

街のはずれの  背のびした路次を

散歩してたら  汚点(しみ)だらけの 

靄(もや)ごしに 起きぬけの路面電車

海を渡るのが 見えたんです

 

ぼくにはこの歌詞が、意味のない言葉の羅列のようには思えません。

言葉と言葉のふつうじゃない組み合わせをつくって、

なんともいえないニュアンスを醸し出しています。

それがあのメロディーと朴訥なうたい方と、美しいギターと相まって、

とんでもなく不思議で異様な世界観を打ち建てていて、

そこに松本隆の大いなる企(たくら)みを感じます。

防波堤ごしに  緋色の帆を 掲げた都市が

碇泊してるのが 見えたんです

さっぱり意味はわからないけど、

なんかイマジネーションが広がるんですよねえ。

オシャレな表紙の雑誌を買ってきたら、

いつもの部屋がパッと変わるみたいな、

日常を非日常に変えてしまう、そんなインパクトを感じます。

 

こういう詩に近いような歌詞もあれば、

もっと具体的にすっと腑に落ちる歌詞もあれば……

歌詞があるから歌なんですよねえ。

 

そうそう、歌詞の最大の効用は、メロディーを覚えるための

”標識”をつけるってことじゃないかしら。

メロディーだけを覚えるって難しいから。