うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

白虎隊の落とし児、活躍す

日本すごい! 日本人えらい!

みたいなテレビ番組とか本が流行ってて、

あれはあれで見てると、

ちょっと気恥ずかしい気がするんですけど、

こないだ西太后のことを書いた日記で紹介した

北京燃ゆ――義和団事変とモリソン

って本をずっと読んでいると、期せずしてこれもまた

日本すごい! 日本人えらい!

って感想を抱かせられます。

正確に言うと、この時代の日本人えらい! ですかね。

 

時は1900年、列国に、いいように国土と利権を奪われていた

東洋の巨人、清帝国

当然ながら排外運動が起こり、

農民の中から立ちあがった愛国結社の義和団に、

清国の正規軍も加わって、列強の公使館が集まる北京城を包囲。

ここに55日間の籠城戦が始まります。

ブラフォーの歌の通り、

フランス イギリス イタリア ロシア
さらに加えて 精鋭日本

(主役がアメリカ人なのでアメリカの国名はありません)

で、日本人は籠城者のなかで人数は少ないのですが、

 まさに「精鋭」で、防衛の中核的な役割を果たしたのです。

その指揮を執ったのが、駐在武官として赴任していた柴中佐でした。

籠城した列強諸国の人たちの彼への賛辞がすごいんです。

 

以下は、ピーター・フレミングの著書『北京龍城』の一節

 

日本軍を指揮した柴中佐は、龍城中のどの国の士官よりも

有能で経験も豊かであったばかりか、誰からも好かれ、尊敬された。

当時、日本人とつき合う欧米人はほとんどいなかったが、

この龍城を通じてそれが変わった。

日本人の姿が模範生として、みなの目に映るようになったからだ。

日本人の勇気、信頼性そして明朗さは、籠城者一同の賞賛の的となった。

籠城に関する数多い記録の中で、直接的にも間接的にも、

一言の非難も浴びていないのは、日本人だけである

 

この本には柴中佐を称賛している記録がいくつも紹介されています。

今日の日記は「他人のふんどし」なので、どっかんと引用しますね。

 

このように、みなから誉め讃えられ、

輝かしい名声を日本にもらした快男子・柴五郎とは

どのような人物であったのだろうか。

柴に関しては、石光真人編著「ある明治人の記録・会津人柴五郎の遺書」

という本があるので、それによって柴のプロフィールだけを紹介するに留める。


柴は当時四十歳。旧会津藩士を父としている。

明治維新で賊軍となり、一八六八年の戊辰戦争

会津若松城が政府軍に包囲された時、

藩士の息子たちは白鉢巻の白虎隊となって涙ぐましい活躍をした。

その時、五郎はまだ八歳だったので、白虎隊には入れてもらえなかったが、

精神的にはもろにその洗礼を受けている。

落城の直後、一族の女は母親も幼い妹も全員自刃した。

父親は戦死し、兄は捕われた。


このような苛酷な運命にも五郎はめげなかった。

知人の世話で東京駿河台の野田駱通・陸軍会計一等軍吏の屋敷に

下僕として雇われ一生懸命に働き、真面目で利口だったので

十五歳で陸軍士官学校に入れてもらった。

士官学校では、教官はすべてフランス人、生活もフランス式であった。

食事はパン、スープ、肉などのフランス料理で、

他の学生はこのような生活に不平をいう者が多かったが、

五郎は自分にとっては苦手のフランス語以外は

まったく天国のようだった、といっている。

東北弁の彼はイとエ、リとユの区別がつかず、みなに笑われたという。


幼い頃から苦労しただけあって、柴は立派な軍人であり、

また心の優しい人問であった。

龍城中みなから柴が敬愛されたのは、実にそのためであった。

薩長閥の牛耳る軍部で、柴は賊藩の出身であるにもかかわらず、

後日、陸軍大将にまで出世している。

また、彼は中国のよき理解者でもあり、

後日の日本陸軍の中国進出に心を痛めた良心的な人間でもあった。

 

ということです。

柴中佐についてはこんなサイトもありました。

www.ifsa.jp

ちなみに籠城者たちを救いに駆けつけた

救援軍の主力となったのが日本軍です。

事変の後、各国が清国に多額の賠償請求をしますが、

日本は最も死傷者を出し、救援軍も多数送ったにもかかわらず、

列国に比べれば出費額にも満たない、控えめな請求額でした。

国際社会(列強)の一員に入れてもらうため、

日本はお行儀よく、謙虚にふるまっていたということです。

清国に対しても対等以上の礼をもって偶したと、この本にはありました。

このあと日英は急接近して同盟を結びます。

日本が国際舞台に躍り出るきっかけとなったのが義和団事変ということで、

果たしてそれがよかったのかどうか。

やがて日本はロシアに勝利して、力量以上の自信をつけてしまうのですね。