うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

決勝Tとキスカ

昨日のサッカーの戦いぶり、賛否両論やったそうですね。

セネガルが負ければ、フェアプレーポイントにより

1次リーグ突破が決まるため、

日本は0―1で負けているにもかかわらず、

後半40分ごろから攻めることなくボールを回し続けた。

ということで会場からは容赦ないブーイングが飛んだとか。

 

決勝トーナメント進出という大目的のために、

これ以上負けないという決断をしたわけです。

実はいま「キスカ島撤退作戦」という史実をもとにした小説を読んでいて、

負けないために一旦引くという決断がどれほど重く厳しいものか

という意味で、W杯のこの一戦に通じるものを感じました。

 

先の大戦で日本軍はハワイというアメリカ領土を爆撃しただけでなく、

北のアリューシャン列島にあるアッツ島キスカ島という2つの島、

すなわちアメリカ領土を占領しました。

ここにアメリカの猛反撃が始まり、アッツ島守備群は玉砕、

残るキスカ島の5千数百の将兵の運命は、

包囲するアメリカの大軍を前に風前の灯火と化しました。

 

そんな彼らを救出すべく撤退作戦が立てられます。

救出部隊を率いる木村少将は、駆逐艦の艦長時代、

敵の輸送船を攻撃する際、乗組員が退船する猶予を与えてから、

輸送船を沈めたというエピソードの持ち主です。

そういう人命第一の提督であればこそ、猪突猛進せず、

慎重に作戦を進めます。

 

島の守備兵を全員救出するには、

濃霧に隠れてこっそり忍び寄る以外、方策はありません。

何度か島に近づくものの霧が晴れてしまい、

ついには燃料補給のために基地に引き返すという決断もしました。

帰ればまた来ることができる

と。

このときの連合艦隊大本営など上層部の怒りはすさまじいものがありました。

一か八かのチャンスにかけなければ勝機がつかめないどころか、

燃料が底をつき、霧の出る時期は終わってしまうという批判の嵐でした。

それももっともなのですが、木村提督は 目標貫徹のためにじっと耐え、

再度の挑戦で無事、全員を救出することに成功するのです。

 

この本を読んでいて、日々決断を迫られる指揮官なんて

なるもんじゃないと思いましたね。

こんな緊張と重圧、並の人間には耐えられません。

おそらく昨日のポーランド戦でもそうだったでしょう。

 

それにしても朝日新聞の朝刊の見出し、

「日本決勝T」

はいただけません。

ポーランドに敗れた事実を先に書くべきです。

撤退を転身と言い換える戦時中のレトリックを思い出しました。

 

ちなみに映画音楽は團伊玖磨作曲でした。


團伊玖磨(福田滋 編曲):「キスカ・マーチ」