うめはらなかせの日記みたいな掲示板2

アコースティックギターの前にすべての曲は平等である

セッション

音楽って「音を楽しむ」って書くのに、

これはどうしたことか。

でも英語のミュージックは

音楽の女神ミューズから来てるのかな。

その意味ではこの映画、音楽の神様の偉大な采配を思わせます。

 

「セッション」、素晴らしかったです。

いままで見た音楽映画のなかで最高かも。

音楽映画って、音楽プラスアルファ青春グラフィティであったり、

孤独の人生、恋愛、町おこし、家族の葛藤……などなど、

いろんな裏テーマと一体になってるのが多いけど、

この「セッション」はシンプルです。

音楽一筋。

こんな解説です――

 

サンダンス映画祭でのグランプリと観客賞受賞を筆頭に、

さまざまな映画賞で旋風を巻き起こした音楽ドラマ。

ジャズドラムを学ぼうと名門音楽学校に入った青年と、

彼にすさまじいスパルタ的指導を行う教師の姿を追いかけていく。

ちなみに驚異の低予算でアカデミー賞3部門を受賞したんだそうです。

 

ジャズって自由な即興演奏で、楽譜なんてないんじゃないかと

思うのは別世界のジャズの話で、

この映画に出てくるビッグバンドはクラシックなみかそれ以上。

部室の壁に「挫折者はロックに行け」みたいな張り紙がしてあります。

鬼教師は、「サックス、120小節目から」とだけ言って、

即カウントを始めます。それもすごく短いもの。

気に入らないとすぐにやめさせて「速いか遅いかどっちだ!」

と迫ります。

え? いまのテンポおかしかった? と観客のぼくは戸惑うし、

映画の中の学生も恐怖に凍りついて茫然自失してます。

気に入らないと主奏者変更を言い渡し、

控えの奏者が取って代わります。

日本の中高の吹奏楽部も昔はこれくらい厳しかったのでしょうか。

 

練習はまるで拷問です。

奏者を追い詰めて追い詰めて、自尊心を奪い去り、

精神が破たんするまで追い詰めて。

うつ病になって自殺してしまう学生も出てしまいます。

主人公も両手から血が噴き出すまで練習して、

音楽以外のことはすべて捨て去って、

それでも最後には挫折しかありません。

 

チャーリー・パーカーはシンバルを投げつけられたから奮起して猛練習をした。

次代の天才を育てるために厳しい指導をしているのだと鬼教師は言います。

一度はその言葉に共感した主人公もやがて鬼教師と決裂することに。

ところが……ここからがこの映画、ただものじゃないんです。

一気呵成に見られます。

なにしろ100分ちょっとしかなくて、

主人公の学生と鬼教師以外はほとんどフォーカスされない単純なストーリーです。

ラスト9分19秒の展開が非常に素晴らしい!

と激賞されていて、そこはネタバレになるので書けません。

 

ただジャズ音楽家に言わせると「ジャズ素人の映画」なんだそうです。

でもこれはジャズドラマーを志した若き監督が

自らの体験をもとに作品にしたもの。

音楽として、ジャズとして、どうかはわかりませんが、

素人の映画好きとしてはこれほど素晴らしい達成はないと思います。

 

最後にひとつだけ。

この映画をなかせさんが見たら、

うめはらさんって天使みたいにやさしい! 

って感じるはず。

それだけは間違いないです。

session.gaga.ne.jp